Lions Data Lab

選手レビューや、一風変わったデータ分析の発信を目指しています(メニューバー工事中…)

【wBB/9】与四球の指標を改良してみた

今更すぎますが、新年あけましておめでとうございます。

今年も最低月1更新は維持できるよう運営していきたいと思いますので、Xアカウントともどもよろしくお願いいたします。

 

さて、新年1発目はここのメインコンテンツである指標考案シリーズです。

 

これまで、セイバーメトリクスにおいてもはや市民権を獲得したといっても過言ではないものの算出手順が複雑で理解の敷居が高いWARやUZR等と異なり、誰でも入手可能な情報をもとにシンプルなロジックで算出できるオリジナル指標の考案を標榜し、初稿の奪三振力やリード力、やらかし度などいろいろと考案してきましたが、その新ネタになります。

 

まあ新ネタといっても、私のような凡人の頭脳に泉のようにザクザクアイデアが湧いて出てくるわけでもなく、今回は奪三振力の考え方をそのまま与四球の指標に当てはめたらどうなるか?というネタになります。

 

それではいってみましょう。

 

 

奪三振力の考え方」とは?

前述の通り、奪三振力は当ブログの初稿で取り上げたものです。リンクを貼っておきますので、未読の方はまずそちらをご一読ください。

lions-datalab.hatenablog.com

 

ただ、かなり前の記事ゆえにすでにお読みいただいた方でも内容を忘れてしまった方も多いと思いますので、簡潔にお伝えすると「投手の一つ一つの奪三振に対して、その打者の三振しにくさで重み付けしたうえで奪三振率を計算することで、より本質的な奪三振能力の表現を目指した指標」になります。

 

この指標のポイントになる考え方は「重み付け」です。初稿では奪三振を対象として計算し、先日別シーズンの数値もご紹介したところですが、今回はセイバーメトリクスにおいてしばしば奪三振と同列の重要度で語られる与四球に対しても同様の計算をしてみよう、ということです。

 

投手の与四球に関する指標といえば、与四球率、すなわちBB/9が簡潔かつ有名ですね。定義は以下の通りです。

 

\displaystyle{BB/9= 与四球 \times \frac{9}{投球回数}}

 

この式が示すのは「その投手が9イニングを投げた場合に与える平均的な与四球数」であり、平均値は3程度で、2を切ると優秀といわれるそうです。

 

奪三振力では、一つ一つの奪三振について打者のK%の逆数を「三振しにくさ」と定義して、重み付けした奪三振率を計算しました。今回はBB/9をベースに、同様の考え方、すなわち打者のBB%の逆数を「四球の少なさ」として重み付けしてやります。BB%の逆数とはつまり「一つの四球を得るのに要する打席数」で、少なければ少ないほど与四球を得る能力が高いことになりますね。

 

上記を踏まえ、今回の指標はwOBAのように加重を使うセイバー指標に倣いwBB/9と呼称します。wはweightedの頭文字で、読んで字のごとく「重みを加えた」という意味を表す接頭辞になります。

 

wBB/9の算出方法

 

今回の指標の定義式は下記の通りです。

 

\displaystyle{ wBB/9 = \sum_{i=1}^n \frac{1/b _ {i}}{1/\bar{b}} \times \frac{9}{投球回数}}

 

nが対象の投手の与四球数、b _ {i}が各四球を与えた打者のBB%(シーズンの四球数/打席数)、\bar{b}は全打者のBB%の平均値になります。

 

逆数のところを見やすく整理するとこんな感じですね。

 

\displaystyle{ wBB/9 = \sum_{i=1}^n \frac{\bar{b}}{b _ {i}} \times \frac{9}{投球回数}}

 

数式だけだとイメージしにくいと思いますので、奪三振力の記事と同様に、簡単に例示しましょう。

 

ある投手が12イニングを投げ、佐藤龍世選手に四球を3つ、愛斗選手に1つ与えたとしましょう。2023年のレギュラーシーズンにおいて、龍世選手は257打席で四球が42、愛斗選手は267打席で四球が3なので、"四球の少なさ"はそれぞれ257/42≒6.12、267/3=89になります。いやぁ、それにしてもすごい差だ…。

 

この場合、\bar{b}はおよそ8%前後と言われているので0.08とすると、この投手のwBB/9は下記のように計算されます。

 

\displaystyle{wBB/9 = \frac{6.12×3+89×1}{1/0.08} \times \frac{9}{12}}

 

この計算結果は6.44となります。

 

従来のBB/9ですと3となりますが、四球が少ないのでおなじみ、すなわち相手目線で言えば「与えてはいけない」愛斗選手に四球を与えることでwBB/9は跳ね上がってしまうわけです。

 

逆に、上の例示において、4つの四球全てを「選べるようになった」龍世選手として計算すると、通常のBB/9の3に対してwBB/9は1.47となります。選球眼の良い選手に四球を与えてしまうのはある意味仕方ない、という考え方で、数値が下がるわけです。

 

このような数式に基づき、いつものように2023年のパリーグレギュラーシーズンを対象としてコンピュータの力を借りてババっと計算してみました。

 

【2023シーズン】パリーグにおけるw/BB9ランキング

その結果がこちらの表になります。※対戦打席数100以上の投手が対象

 

奪三振力と同様に、やはりベースとなる指標が良い投手がそのまま上位に来ますね。逆も然り。うちの増田さんはさすがです。

 

ダントツトップのロッテカスティーヨ投手はもちろんすごいのですが、昨季中盤から彗星のごとく現れたオリ東さんが目を引きますね。山本由伸投手という大エースが抜けますが、こう雨後の筍のごとく投手が生えてくる育成環境は羨ましい限りです。

 

「比率」というのはwBB/9をBB/9で除した値であり、このカラムのカラーマップによって重み付けによりどれだけ変わったかがわかるようになっています。

 

この標榜している通り、仮にこの指標が「与四球を防ぐ力」をより正確に示していると仮定すれば、オリの本田投手やハム宮西投手、ロッテ坂本・澤村両投手、西武ティノコ投手なんかは打者のめぐり合わせ次第でもう少し与四球を減らせた可能性が高いですね。いずれの投手もリリーフというのもまた謎の説得力を感じます。ゆえにティノコ投手はもう1年様子見しても良かったかな…と思わないこともない。

 

逆に中位以上にいながら赤が濃い投手というと、オリ田嶋・宮城両投手、ハム河野・上沢両投手、SB東浜投手、楽天早川投手あたりですが、先発が多いのも面白いですね。先発はリリーフと異なり上位から下位まで色々なレベルの打者と万遍なく対戦するため、リリーフよりも運の要素は小さくなります。具体名は伏せますが、与四球の内訳を見ると本来四球を与えてはいけない選手にちらほら与えている点で共通しているので、そのあたりを撲滅することでさらに成績向上を期待できるかもしれません。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。

 

今回は時間がなかったので全体のBB%を8%としたり、セリーグ分を載せられなかったりと片手落ちのような記事になってしまいましたが、そのへんはすぐ対応できるので近くアップしたいと思います。

 

次回はここから発展して、奪三振力とwBB/9を複合させたwK/BBを計算してご紹介したいと考えております。また、初稿では語彙がなさすぎて「奪三振力」という名前にしてましたが、今回のように頭に「w」を付けた方がセイバーっぽくてかっこいいことに気づいたので、その辺もこっそり改称したいですね。お楽しみに。

 

それではまた!