Lions Data Lab

選手レビューや、一風変わったデータ分析の発信を目指しています

【ゲームレポート】2/28(日)西武vsロッテ@春野

【試合結果】M9ーL3 敗戦

 

 こんにちは、LDLです。

 

 今日もゲームレポート書いてみます。昨日の記事は、後で読み返すとかなり冗長で見づらかった気がしたので、今日はもう少し簡略化してみました。選手名の横にあるアルファベットのA~Eは、完全に私の独断と偏見に基づく総評です。

 

 それではさっそく。

 

 

投手

 

平井;C

■投球回3 被安打3 与四球1 与死球0 奪三振2 失点3 自責点

■初回はバタついたが、以降は三凡に抑え、可もなく不可もなくといった印象。直球の威力もまずまず。対左では昨季と同様に内角球バックドアの組み立てだったが、カーブを使ったのは新境地か。新球チェンジアップをもう少し見てみたかったところ。

 

増田;D

■投球回1 被安打0 与四球2 与死球0 奪三振1 失点0 自責点

■生命線のストレートが抜けまくり、ボール先行の苦しい内容だったが、若林の好守備に助けられた。ベテランなので、開幕に照準を合わせているだけと信じたい。

 

吉川;C

■投球回1 被安打0 与四球0 与死球0 奪三振1 失点0 自責点

■ボールの質自体は良かったが、ストレートが抜け気味なのと、カーブの腕の振りがやや気になる。

 

大曲;E

■投球回0.1 被安打3 与四球1 与死球2 奪三振0 失点4 自責点

■はっきり言ってピッチングになっていなかった。変化球は実戦レベルではなく、ストレートをストライクゾーンに投げるだけで精一杯。打たれるならまだしも、ストライクが全く入らない投手がA班に呼ばれることはないはずなので、まずは本来の実力を出せるようメンタルコントロールをできるようになりたい。また、打者がストレートのみを待てる中で空振りを二つ奪えたので、そこも自信にして、次は結果はどうあれ実力を見せてほしい。

 

佐野;A

■投球回2.2 被安打2※ 与四球0 与死球0 奪三振 失点0 自責点

■ピンチで登場し、直球で追い込み変化球をひっかけさせて併殺に打ち取る、これ以上ない注文通りのピッチング。回跨ぎもなんのその、昨年と同様に躍動感のあるフォームで、怪我の回復が万全なら今季は飛躍の年になりそう。

※ボテボテの当たりに山野辺がチャージして捕球ミス、恐らく内野安打

 

井上;D

■投球回1 被安打3 与四球0 与死球0 奪三振1 失点2 自責点

■佐藤にタイムリーを打たれたボールが象徴的だが、クイックだと投げ急いで体が一塁側に流れてしまい、直球がシュート回転する悪癖がある模様。山野辺が捕っていれば無失点だったが、そうは考えずにこの点を修正していってほしい。

 

野手

 

金子;A

■①左安②四球 / 1打数1安打1四球1盗塁

三塁手の頭上を越える低いライナー

■昨日に続き1番の役割をきっちり果たし、3回で早々に四国に縁のある岸に中堅を譲った。

 

源田;B

■①遊安(遊悪送球)(+1)②投ゴロ③二ゴロ / 3打数1安打

■クリーンヒットはないが、前の打者が出塁している中で転がせているので役割は果たせている。

 

外崎;D

■①遊ゴロ②三ゴロ③三ゴロ④遊ゴロ /4打数無安打 

■打撃は打球も含め一向に上向く気配がない。ただ、守備の安定感はさすが。

 

山川;B

■①左2(+1)②見三振③左飛 / 3打数1安打1打点

①体勢を崩されながらも上手くバットに乗せた

■安打は出たものの、第三打席でスタンドインできなかったところも含めて、まだまだ調整中といった印象。ただ、今はバットが振れればそれで充分だと思う。

 

森;B

■①遊飛②一ゴロ③遊安 / 3打数1安打

③低いライナーで遊撃手のグラブを弾く安打

■可もなく不可もなく。打撃はこの調子を維持してほしい。

 

若林;A

■①右安②二飛③右安④遊併 / 4打数2安打1盗塁

①追い込まれてから外角の直球をキレイに逆方向へ

③外寄りの直球を逆らわず右へライナー性のヒット

■打っては佐藤友亮を彷彿とさせる見事な流し打ちマルチヒット

走っては楽々のタイミングで盗塁。

守っては無死一二塁のピンチで、安打性の当たりをスライディングキャッチし、飛び出した二塁ランナーも刺す(中継あり)好守備。

文字通り走攻守全てでアピールし、昨日の苦いバントミスを取り返した。

 

山野辺;D

■①空三振②空三振③見三振 ④中2 / 4打数1安打

■最終打席で帳尻を合わせるように速球を長打にしたが、とにかく変化球への対応が課題。この脆さ、どことなく木村に通じるものがある。

守っても中熊の好送球をこぼしてアウトにできないなど、内野手としては厳しいと言わざるをえない。

 

ブランドン;B

■①空三振②右本(+1)③見三振 ④空三振 / 4打数1安打1本塁打1打点

②主力リリーフ左腕・松永の直球を見事逆方向へスタンドイン

■技術の若林とは対照的に、持ち前のパワーをアピール。ただし他の3三振からわかるように、厳しい言い方をすれば現状それ以外のアピールポイントがないので、なんとか残り期間で課題を克服してほしい。

 

佐藤;D

■①右飛②空三振③中飛 ④一ゴロ / 4打数無安打

■チャンスの第三打席は良い当たりを見せてくれたので、まだまだ見てみたい。

 

岸;C

■①中安②見三振 ③一ゴロ / 3打数1安打

①ロッテのルーキー・河村の直球を見事センター前へ

■第三打席もアウトにこそなったが鋭い当たりで、内容は悪くなかった。若林と切磋琢磨していってほしい。

 

山田;E

■①見三振 / 1打数無安打

■中途半端なスイングで凡退した昨日に続き、3球三振と積極性に欠ける内容で、呆れてしまう。

 

鈴木;B

■①左安  / 1打数1安打

①外角のツーシームをキレイに流し打ち

■らしい打撃でアピールした。

 

中熊;C

■①遊ゴロ

■山野辺の落球でアウトにはならなかったが、好送球で捕手としてアピールした。

 

 

 以上です。投手では佐野、野手では若林が素晴らしかったですね。

 

 期待の大曲投手がいい感じならフォームとかの詳細レビューもしようかと思ったのですが、この内容だと次回以降に持ち越しですね。

 

 それではまた!

【ゲームレポート】2/27(土)西武vsロッテ@春野

 こんにちは、LDLです。

 

  今まではデータ分析の記事をお送りしてきましたが、今回は今年初めてじっくり試合を観れてテンションが上がってるので、突発的かつ試験的にゲームレポートを書いてみました。完全な主観に基づく戯言の羅列で、推敲とか何もしてないので、1ファンの戯言として話半分で読んでいただければ。

 

 投手と野手に分けて、選手ごとの総評を「◎・○・■・▲・×」の凡例で示し、成績と所感を書く形式です。また、良かった点は赤字や橙字でハイライトしてあります。

 

 また、一部の選手にはコメントも付けてます。

 

 それではどうぞ。

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投手

 

浜屋

投球回3 被安打3 被本塁打2 失点2 自責点

奪三振3 与四球1 与死球

 

初回に2者連続で初球をスタンドまで運ばれ2点を失うも、バタつくことなく切り抜け、以後は無失点に抑えた。キレで勝負するタイプとはいえ、投手有利のこの時期に長距離打者ではない岡に高めの直球を逆方向にスタンドインされるあたりは完全に球威不足。とはいえ球威は気温とともに上がっていくだろうし、生命線のキレはまずまずで空振りも取れていたので、やはりゾーン内の変化球でカウントを稼いでいけるかが今季の飛躍の課題か。

また、3回で2度盗塁を企図されたのも、走りやすい投手と思われている可能性があり、先発としてやっていくうえでは気になるところ。

 

■平良

投球回1 被安打0 被本塁打0 失点0 自責点

奪三振0 与四球0 与死球0 

 

ストレートは常時151程度で、数字は平良にしては抑えめなものの安定しており、フォームはしっかり固まりつつあるか。変化球のストライクボールがややハッキリしていたが、チェンジアップはしっかり抜けており、概ね順調に調整できていそう。

 

▲宮川

投球回1 被安打1 被本塁打0 失点1 自責点

奪三振1 与四球1 与死球0 

 

ストレートの球威はまずまずだが、キャンプから引き続き変化球が全く制御できておらず、このまま調子が上がらなければB班降格もチラつきそうな不安の残る内容。

 

○伊藤

投球回3 被安打3 被本塁打0 失点0 自責点

奪三振1 与四球0 与死球0 

 

テンポよく速球・変化球をバランスよく投げ込み、速球はMAX147km/hを記録。球威・キともにまずまずで、ボールになってもある程度制球はできており、3安打は浴びたものの後に期待できる内容。牽制で韋駄天・和田を刺すなど落ち着いたマウンド捌きも○。

ファンの間で先発ローテ候補として名前が挙がることは少ないが、後半のリリーフで3イニングを任されているあたり、首脳陣から先発として期待されている可能性は高い。

 

■田村

投球回1 被安打1 被本塁打0 失点0 自責点

奪三振0 与四球0 与死球0 

 

安打は捉えられたものではなく、エラーで併殺にはならなかったがランナー1塁でゴロも打たせており、ピンチでは空振り奪取率の高いチェンジアップで注文通り三振を奪うなど、持ち味は発揮した。相変わらず制球はアバウトなので、せめて内外角はきっちり投げ分けたいところ。

 

野手

 

続いて野手です。○の中の番号は、打席の順番を表しています。

 

◎金子

3打数2安打

①高いバウンドの打球で美馬のミスも誘い、「らしい」安打で先頭打者の役割を果たす。さらに相手の牽制ミスで二塁を越えてきっちり三塁まで到達する好走塁。

②追い込まれてからボールになるフォークを見極め、直後の甘いストレートをしっかり叩きセンターオーバーという内容のある打撃でチャンスメーク。

③ボールになる低めの変化球を打たされ一ゴロ

 

1番打者の役割をきっちり果たした。この調子を維持してほしい。

 

■源田

3打数無安打

①平凡な遊飛

②変化球をひっかけて二ゴロに倒れるも、金子を進塁させる最低限の仕事

③変化球をとらえるも右飛

 

○森

3打数2安打1本塁打2打点

①追い込まれてもボールになる良い変化球を見送り、詰まりながらもサードの後方に落とす、ある意味理想的なタイムリで1点を返す。

②初球をフルスイングするも、平凡な左飛でランナーを還せず

③インハイの浮いた変化球を高々と打ち上げ、滞空時間の長いソロホームラン

 

技ありのタイムリーにソロHRと、2打点の活躍で打棒は順調。

ただし2度の盗塁企図に対して握り損ねて送球すらできなかったのは大きなマイナス。捕手として評価されたいなら、基本である捕球は丁寧に取り組みたい。

 

▲山川

3打数無安打

①捕邪飛に倒れるもきっちりスイングできており、不安視されていた怪我の影響はなさそう。

②外角の変化球にタイミングを外され、左飛

③甘い変化球だがタイミングを外され、三飛

 

▲外崎

三打数無安打

①内寄りの速球に押され右飛

②初球を打って平凡な中飛

③甘めのボールに詰まらされ遊ゴロ

 

■若林

3打数無安打1四球

①三塁線の深いところにゴロを放つも、安田の好守備にも阻まれ三ゴロ

②甘い速球をしっかりとらえるも、伸びがなく左飛

③追い込まれてから粘りを見せ、最後は外に逃げる良いスライダーを2球連続で見極めるという内容のある四球で出塁し、盗塁も決める(最後は球審が辛かった気も)

④1点ビハインドの最終回、無死一二塁でバント失敗

 

最後のバントミスは、タイプを考えれば大きなマイナス。いきなり3割打てるわけではないので、1軍で生き残るには最低限の仕事はこなせるようになりたい。

 

▲鈴木

3打数無安打

①フルカウントまで粘るも、インローの速球に見逃し三振

アウトローの直球に見逃しで3球三振

③外の変化球を引っ張って平凡な右飛 

 

▲佐藤

3打数無安打1死球

①初球を叩くも平凡な三ゴロ

②2球目で平凡な一邪飛

③ボテボテの遊ゴロでランナーを還せず

④右足のつま先付近に死球

 

■ブランドン

3打数無安打1四球

①直球3球で見逃し三振。かなり甘いコースだったが、フォークが頭にあったと思われる

②直球をとらえるも二ゴロ

③追い込まれたものの抜けた変化球をきっちり見送り、四球で出塁

④1打逆転サヨナラの場面で右飛

 

変化球対応が課題とされるが、第四打席ではある程度直球に張れる場面だったので、きっちり仕留めたかったところ。

また、おかわりさんの守備に慣れているせいもあるが、まだまだ捕球までのステップがぎこちなく、送球にも力感が見られるので、やはり守備が怪しいという印象。

 

■岸

1打数無安打

①外の変化球に泳がされ、平凡な中飛

 

▲山田

1打数無安打

①ランナー1塁の場面で、変化球が止めたバットに当たってボテボテの投ゴロ。思い切りの良さは声出しだけでなく、バッティングで見せてほしい。

 

▲駒月

1打数無安打

①真ん中の変化球で空振り三振。ちょっと厳しい内容。

 

○熊代

1四球

①きわどいストレートを落ち着いて見送り、四球で出塁。1点ビハインドの最終回の先頭打者なので、地味ながら良い働き。

 

▲山野辺

1四球1失策

①熊代に続いて四球で出塁。ただ相手投手・山本の自滅感が強いか。

 

守備では途中出場から、6-4-3の併殺機会で悪送球。うーんこの。

 

▲中熊

1打数無安打

①一打同点のチャンスで、厳しめの球に手をだし平凡な遊飛。

 

 

レポートは以上です。金子は練習試合で活躍したからといって持ち上げるような立場の選手でもないので、伊藤翔が思いのほか良かったのが収穫でしょうか。

 

データを載せられないのが歯がゆいところですが、時間があればまたやってみたいですね。

 

それでは。

 

球速の出やすい球場・出にくい球場を数字で検証してみた(後編)

 こんにちは、LDLです。

 

 一部では練習試合も始まり、いよいよ球春の足音が聞こえてきた感じがしますね。西武も若林やブランドンといったルーキーが芽吹いてきて、わくわくしています。

 

 ちなみに私のイチオシは、Twitterでも書いている通りB班の大曲です。本日の練習試合では無失点ながら荒れていたようで時間はかかりそうですが、モノになったときは「ワシが育てた」といわんばかりに勝手にドヤりたいとか思ってます。

 

 さて今回は、前回の記事「球速の出やすい球場・出にくい球場を数字で検証してみた(前編)」の後編です。未読の方は、数分で読める内容なので、前編をご一読のうえ本稿をご覧ください。

 

 

他球団のレーダーチャート

 

 前編では、西武投手陣の球速が球場ごとにどのように変わるのかを検証し、西武投手陣はPayPayドームと札幌ドームでは球速が伸び、ZOZOマリン楽天生命パーク、京セラドームでは球速が出ない傾向があることがわかりました。

 

 まずは前編での予告通り、西武以外のパの残り5球団のチャートを一気にご紹介いたします。なお、前編未読の方のために補足しますと、このチャート上の数値は、2020年レギュラーシーズンを対象に、①パの6本拠地全てで登板があり、②40イニング以上投げた投手に対して、各球場における速球(ストレート、ツーシームのうちメインの方)の平均球速を、全球場における平均球速で割ることでスケーリングした数値です(以後、便宜的にスピードレートと呼称します。)

 

 スピードレートは、1より大きければその投手にとって球速が出やすい球場であり、1未満であれば球速が出にくい球場となります*1。チャート上の見方としては、赤の破線が基準の1なので、そこより外側に尖っていれば「球速が出やすい」、内側に凹んでいれば「球速が出にくい」となります。

 

 では早速見ていきましょう。なお、西武のものは前編をご参照ください。

 

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 いかがでしょうか。

 

 西武投手陣だけでは偶然の可能性を排除できなかった傾向が、他球団の投手陣においても同様にはっきり見えていますね。ホームグラウンドかどうかに関係なく、2020年シーズンに限れば下記の傾向があることは言い切ってもよさそうです。

 

 ■球速の出やすい球場;PayPayドーム、札幌ドーム

 ■球速の出にくい球場;ZOZOマリン楽天生命パーク、京セラドーム大阪

 ■どちらでもない球場;メットライフ

 

  少し前に西日本スポーツさんが掲載した「本当にヤフオクDでは球速が遅くなる? ソフトB岩崎の珍要望から検証してみた」という記事にあるように、以前は球速が出にくかったのが、どうやら球速表示のソースをスピードガンからトラックマンに変更したことで、球速が出やすい球場へ一変したようです。今やトラックマンはパリーグ全球場に導入されていると聞いていますが、こちらの記事にある通り「球場ごとの差はあまりみられない」というのが事実だとしたら、トラックマン表示に切り替えているのはPayPayドームと札幌ドームの2か所だけ、と考えるのが自然でしょうか。

 

 真偽は定かではないものの、スピードガンよりトラックマンの方が数字が出やすいという噂が本当だとしたら、ロッテは大谷超えの可能性を秘めた佐々木朗希の一軍登板に向けてソースを切り替えてくるかもしれませんね。来オフの検証の楽しみが増えました。

 

 球場と投手のタイプの相性

 

 次に、このチャートで示した投手の中で、各球場におけるスピードレートの上位10名と下位10名をそれぞれピックアップして、投手のタイプと球場との相性を探ってみましょう。なお、表は氏名のみで、数値は煩雑になるので割愛しています。

 

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 球場含め、チームごとに色分けしてありますが、特にホーム球場だから慣れていて球速が出やすいといったことはなさそうです。 「球速が出る=投げやすい」と考えるのは些か短絡的ではありますが、よく耳にする「マウンドはホームチームのエースに合わせて設計されている」という噂に疑問符の付く結果となりました。

 

 ただ鋭い方はぱっと見で気づいたかもしれませんが、PayPayドームとメットライフZOZOマリンにはある特殊な傾向が色濃く見て取れます。わかりますかね?ピンとこなかった方は、もう一度この3か所をよく見てみてください。

 

 そうです、利き腕です。PayPayはTOP6までが左腕で占められ、TOP10に7人がランクイン。メットライフはTOP5が左腕で、同じくTOP10に7人がランクインしています。そして、どちらの球場も下位は全員右腕です。

 

 特にPayPayドームはこの傾向が顕著で、11位以下でも、11位塩見、12位モイネロ、15位田嶋、17位中村稔弥と、実にTOP20に左腕が半分以上の11人もランクインしています。そして、それ以下はすべて右腕です。

 

 逆に、ZOZOマリンのTOP10は松井を除いた9人が右腕で、下位は7名が左腕です。さらに、ここまで露骨でないにしろ、楽天生命パークや京セラドームでもZOZOマリンに似た傾向が見られますね。

 

 ネタばらしをしたところで、さらにわかりやすく、右腕を青で、左腕を黄色で色分けし直した表がこちらです。上記でご説明した傾向がより鮮明になったかと思います。

 

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 さぁ、利き腕に応じて球速が出やすい球場と出にくい球場が存在することがわかりました。配置転換もあった松井や便利屋的な起用をされた加藤・中村稔弥等、平均球速に起用法が影響していそうな投手も含まれていますが、やはりこれだけ偏ると利き腕に原因があるのは間違いなさそうです。

 

 この傾向には個人的にとても驚きました。というのも、マウンドの硬さや傾斜といった、球場ごとに異なる球速に直接影響しそうな要素に、利き腕の左右は関係ないはずだからです。「外国人が投げやすい球場」みたいな話はよく耳にしますが、「左腕が投げやすい球場」なんて、少なくとも自分は聞いたことがないです。

 

 ではなぜこんなことが起きるかというと、これは推測ですが、これらの球場では単純にトラックマンのセンサーやスピードガンの測定点が投手に対して正対せず、左右どちらかにずれていることが原因と考えられます。表示される球速は、投手のリリースポイントとセンサーの距離や、ボールの軌道とセンサー面との角度に影響されている可能性があるわけです。トラックマンもスピードガンも、測定原理の根本がドップラー効果にあるとされていることを踏まえれば、距離はともかく角度に影響されるというのは自然な発想ではありますね。事実、ネットの検索で出てくる仙台大学さんの論文で、照射する電波とボールの進行方向の角度がつけばつくほど、計測される数値は低下することが実験で示されているようです。

 

 現時点で、球場内表示のソースがトラックマン に切り替わったことが明言されているのは私が知る限りではPayPayドームだけなので、この仮説を検証できるのはまだ先になりそうですが、世間的に「信頼性が高い」とされているトラックマンの計測値に左右の偏りがあるとしたら、それはちょっとどうなのかなと思ってしまいますね。

 

 さて、角度という観点で利き腕以外に気になるのは、腕の角度ですね。利き手では平面的な角度に差が出ますが、オーバー・サイド・アンダーといった腕の角度では高さに差が生じます。先ほどの利き手と同様、オーバー/スリークォーター・サイド・アンダーで色分けしてみましょう*2。緑がサイド、薄い赤がアンダーです。

 

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 こちらはどの球場でも上位~下位に散在しており、利き腕ほど明確な傾向は見らせませんね。強いて言うなら京セラで上位のアンダー二名がPayPayでは下位になっている点が気になった程度ですが、オーバースローの長身外国人も同じようなところにランクインしているので、有意な差とは言えないでしょう。仮に腕の角度の影響があったとしても、前述の利き腕や、個人の投げやすさの影響に比べて些少といってよいでしょう。

 

 おわりに

 

 いかがでしたでしょうか。

 

 今回の検証で、パリーグの6本拠地における球速表示には、実際に「球速の出やすい球場」「出にくい球場」は明確に存在し、さらに左右でも出やすさに違いがあることが証明されました。

 

 ただし留意していただきたいのは、今回勝手に定義したスピードレートは、その性質上必ず1以上と1以下に分かれるため、あくまで「出やすい」「出にくい」というのは相対的なものにすぎないということです。

 

 前編で触れた神宮の例になぞらえるのであれば、PayPayや札幌ドームも「出やすい球場」であることになってしまいますが、それもあくまで相対的なものです。ドップラー効果を利用するという測定の原理上、実際の球速よりスピードが上乗せされることはないはずなので、正確には「出やすい球場」などというものはなく、「その通り出る球場」と「出にくい球場」しかないのだと思います。よって、上記の球場の分類を改めて下記のように定義し直したいと思います。

 

 ■球速がほぼそのまま出る球場;PayPayドーム、札幌ドーム

 ■球速がやや出にくい球場;メットライフ

 ■球速の出にくい球場;ZOZOマリン楽天生命パーク、京セラドーム大阪

 

 ゆえに、「球速が出やすい球場」での記録を軽視するのではなく、それはそのまま捉えて、「球速の出にくい球場」で記録が更新されたときに、より大きな賛辞を贈るというスタンスで観戦すべきかな、というのが今回の結論です。検証の結果自体とはあまり関係ないですが、これが素直な感想です。

 

 前編でも書いた通り、平良は相対的に球速の出にくい楽天生命パークにおいて160キロの大台に乗せたので、今季の記録更新は大いに期待してよいものだと思います。そして、もしZOZOマリン楽天生命パーク、京セラドームで164キロを出したときは、心の中で「日本人最速は平良だ!」と、密かに、勝手に誇ろうかと思ってます。もしかしたらTwitterではつぶやいてしまうかもしれませんが、そのときは生暖かい目で見てやってください。

 

 今回は以上になります。明日使えるプロ野球のムダ知識、くらいにはなったかなと思いますので、ぜひプロ野球仲間に話してみてください。

 

 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

*1:前編でも記述した通り、先発・中継ぎ併用の投手は先発をした球場で数値が落ちる傾向にありますが、全球団の正確な運用は把握できていないため、今回は特に選別することなく計算しています

*2:完全に私の主観による分類です。

球速の出やすい球場・出にくい球場を数字で検証してみた(前編)

  こんにちは、LDLです。

 

 いよいよ待ちに待ったキャンプがスタートしましたね。

 

 無観客というのは寂しい限りですが、その分インターネット配信が拡充されたのはとてもありがたいです。シーズンオフもパリーグTVにお布施した甲斐があるというものです。コロナがなくとも南郷は遠くてなかなか行けない自分としては、来年以降も継続してほしいですね。部屋で毛布にくるまって、ダラダラと観るキャンプもええもんです。

 

 さて、前置きはこれくらいにして、今回こそはサクッと読めるよう、特に考察の余地もない検証記事をお送りしたいと思います。

 

 題材は、みんな大好き「球場の球速表示」です。

 

 

神宮のお話

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 「神宮は球速が出やすいから」

 

 ある程度長い間プロ野球を見てきたファンの方なら、一度は聞いたことがあるフレーズではないでしょうか。 

 

 球速というと、日本最速の165キロをたたき出した二刀流右腕・大谷翔平をはじめ、同世代の藤浪、育成出身の千賀や国吉と、今や160キロ超えの剛球を繰り出す日本人投手も以前ほど珍しくはなくなりつつあります。昨季の山賊打線の大不振をカバーし、西武をAクラスに導いた立役者であるリリーフ陣のうち、平良・ギャレットの二人も160キロをマークして話題になりましたね。平良は2/3時点ではやくも153キロをマークしたとあって、今季は更なる記録更新にも期待がかかります。

 

 ただ、記録保持者の大谷を除けば、2010年に当時ヤクルトに在籍していた佐藤由規が161キロを計測したときは本当に衝撃的でした。衝撃のあまり「神宮だから実際は161も出ていない」と、記録を疑問視する声も上がった記憶があります。今でもインターネットで「由規 161 神宮」と検索してみれば、当時のそのような声を多く見ることができます。

 

 確かにそういった感覚は自分の中にもありましたし、何年か前まで最速記録の話題によく登場していた五十嵐亮太石井弘寿・林昌勇が皆ヤクルトに所属していたという点も、そういった印象に拍車をかけているのだと思います。

 

 さらに、ドラフトの際に「最速152キロ」といった触れ込みで鳴り物入りでプロ入りしながら、ふたを開けてみれば140キロそこそこしか出ないといった投手が頻出したのも影響しているように思います。大学野球の聖地・神宮で計測した最高球速は、速めに表示されるからアテにならない、というわけです。

 

 神宮以外にも、「あそこは出やすい」「出にくい」といったイメージを、おぼろげながらみなさんはお持ちなのではないでしょうか。実際のところ、使用している機器をはじめとして全てを同じ条件で計測しているわけではないのだから、球場ごとの差異があってもまったく不思議ではありませんし、特段咎めるようなことでもないと思います。

 

 でも、さきほどの由規の例のように、せっかく記録を更新したのに、何の根拠もなく「そこは数字が出やすいからなぁ」と過小評価されてしまうのはもったいないですよね。素晴らしいパフォーマンスは相応の賞賛を浴びて然るべきと思います。一方で、体感としてやはり「出やすい・出にくい」というのも存在しているとも思います。

 

 そこで今回は、そのへんのあやふやなイメージを払拭すべく、2020年シーズンに記録された実際の数字をもとにして「球場ごとに球速にどの程度の差が生じるのか」を検証していきたいと思います。以降の章で分析結果を示していきますが、そちらを読む前にご自身で予め「球速が出やすい球場」「出にくい球場」をイメージして、答え合わせをしてみることをおススメします。

 

西武投手陣@パリーグ6本拠地

 まず手始めに、ここの読者がよくご存じの西武投手陣のみピックアップし、パリーグ各球団の本拠地(メットライフ、PayPayドーム、ZOZOマリン、札幌ドーム、京セラドーム大阪、楽天生命パーク)における昨季の速球*1の投球数と平均球速をデータベースから引っ張り出してみます。対象者は、昨季の投球回数が40回以上かつ全ての球場で登板のあった投手としています。40という数値に深い意味はありません。

 

 それでは早速見ていきましょう。

 

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 うーん、これだけだと数字ばかりですし、球速帯も投手ごとに異なるので、イマイチ傾向がつかめませんね。

 

 そこで、各投手の平均球速で割ってあげることで、全ての投手に対して「1以上であれば球速が出ている球場、1以下であれば出ていない球場」といった具合に同列に扱えるようにします。いわゆるスケーリングというやつで、理系用語でいう正規化とか標準化と同じような類のデータ処理ですね。その結果がこちらです。

 

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 徐々に傾向が見えてきました。さらに視覚的にとらえられるように、各球場を頂点としたレーダーチャートにしたものが、下記の図になります。

 

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 見通しが良くなったことで、見事に傾向が見えましたね!念のために補足しておくと、赤破線が基準の1なので、それより外にとがっている球場は球速が出ており、内側にへこんでいる球場は球速が出ていない球場となります。その見方で整理すると…

 

■出やすい球場;PayPayドーム、札幌ドーム

■出にくい球場;ZOZOマリン楽天生命パーク、京セラドーム大阪

■どちらでもない球場;メットライフ

 

と分類できそうです。

 

 対象が西武投手陣なので、ほとんどの投手がホームグラウンドであるメットライフにおいて1付近に集中するのは一見自然なことのように思えますが、仮説の域を出ないので他チームでも同様に検証していく必要がありそうです。

 

 さらに、現時点では計測機器に起因するものとも言い切れません。投手によってマウンドに得手不得手があったりするのはご存じだと思いますが、単にPayPayと札幌のマウンドが西武投手陣にマッチしていて、ZOZOや楽天生命パーク、京セラDが合っていないだけということも十分考えられます。まぁだとしたら、あの対戦成績はどうなんだという気もしますが…。

 

 なお、ギャレットや平井については、数は少ないものの先発した試合があり、その球場で数値が低くなっているので、本来であればそこも考慮する必要があります。しかし、リリーフを先発させるショートスターターなる戦術が登場した昨今において、同戦術を積極的に活用している日ハムをはじめとした他球団のリリーフの運用までは把握しきれていないため、以後の検証にて統一感をもたせるべく、今回は除外せずそのままカウントしています。

 

 余談ですが、平良が160キロを記録したのは楽天生命パークですが、そこは彼個人の平均球速を基準に評価すると、意外にも「出にくい球場」に該当するようです。PayPayドームと比較して平均球速にして2.9キロもの差があるので、ベストコンディションのときにPayPayドームでの登板があれば、記録更新も期待できそうですね。

 

とりあえずここまで

 いかがでしたでしょうか。ご自身のイメージと、実際の数値は合致していたでしょうか。

 

 冒頭で申し上げたように、今回はサクッと読了できることを目指したので、いったんここで切り上げます。文字数もなんとおよそ6割に!

 

 後編では、他5球団に対しても同様のデータ整理をしつつ、所属チームではなく投手のタイプごとに「球速が出やすい球場・出にくい球場」があるかどうかを探っていきます。データ処理自体はすでに完了していて、一部の球場で意外な事実が見えてきましたので、後編もぜひお付き合いいただけますと幸いです。

 

 また、今回は冒頭で神宮の話を引き合いに出しておきながらセについては触れないままでしたが、もし需要があればセも取り上げたいと思います。ぜひ、お気軽にご意見ご感想等お寄せください。

 

 それでは!

*1:基本的にストレートと同義ととらえていただいて問題ありませんが、ニールのようにツーシーム主体の投手はツーシームを抽出しています。

捕手のリード力の数値化に関する考察(後編)

こんにちは、DataLab管理人です。

 

親しみやすいハンドルネーム的なものを考えてみたのですが、センスのない私にはあまり良いものが思い浮かばなかったので、とりあえず呼びやすさ重視でサイト名の頭文字を並べてLDLと名乗ることにします。以後、よろしくお願いいたします。

 

さて、前回の記事「捕手のリード力の数値化に関する考察(前編)」はいかがでしたでしょうか。あまりにも文章がダラダラと長くてギブアップしてしまった方も多かったかもしれませんが、今回の後編はデータ中心で短めにまとめるつもりなので、引き続きお付き合いいただけますと幸いです。

 

目次は下記の通りです。

 

見逃し三振奪取率の高い捕手は?

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 前編の末尾にて、2020年のNPBにおける捕手の見逃し三振奪取数ランキングを掲載しました。そこで触れた通り、現代野球では捕手の併用が当たり前になっているので、奪取数だけで比較してしまうとどうしても正捕手が有利になります。そこで、まずは奪取数を奪取率に変換するために、対戦打者数で割ってみることにしましょう。打率と同じ考え方ですね。

 

 さぁ、ご自身の好きな捕手は、15人中どのあたりにランクインするでしょうか?結果を見る前に、予想してみてください。

 

 そして、その結果がこちらです。

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 奪取数に続いて、奪取率でもホークスの甲斐がトップとなりました。一方で、奪取数では2位だった西武の森友哉は、なんと一気にブービーの14位までランクダウン。

 

 二人とも出場試合数は104でランキング対象選手内最多ですが、他の捕手が併用のため70~80試合が多く、対戦打者数が甲斐や森より少なくなるため、順位にかなり変動があったようです。それでもここまで差がついてしまうのは面白いですね。

 

 さらに興味深いのは、必ずしもチームの防御率の序列とは一致していないという点です。トップの甲斐が手綱を握るホークス投手陣のチーム防御率はリーグ首位、脅威の2.92で、リーグ2位のロッテに0.89もの大差を付けて順当なように思われますが、そのリーグ2位のロッテの正捕手として92試合に出場した田村は、なんと最下位です。

 

 同様に、奪取率2位木下の所属する中日は防御率がリーグ4位、奪取率3位太田の楽天防御率がリーグ5位です。他は割愛しますが、見逃し三振奪取率とチーム防御率にはあまり相関はなさそうですね。

 

甘いゾーンにしぼってみると?

 でもちょっと待ってください。

 

 前編でも述べたように、上記の見逃し三振には、ど真ん中の「打ってください」というものから、ゾーンいっぱいの見逃し三振まで様々なものを含んでいるため、このままだと投手の制球力や打者の選球眼、球審のジャッジといった外乱に大きく依存してしまっているかもしれませんね。

 

 そこで、捕手の球種選択により打者の意表を突いた価値・ウェートを大きくすべく、「きわどいストライク」は除外した数値を出してみたいと思います。

 

 何をもって「きわどい」とするかに明確な答えはないと思うので、とりあえず私の主観でキリの良い縦横外側2割のゾーンを「きわどい」と定義し、そこから内側に収まったボールによる見逃し三振のみを対象として、改めて奪取率を計算してみました*1

 

 ゾーンのイメージと算出結果は下記の通りです。

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 はい、またしても甲斐が首位に。甘いコースでも見逃し三振を奪えてしまうのは、ここでの考察通り甲斐のリード力のなせる業なのか、どの投手も息をするように150キロを超えてくる投手陣のスピードに手が出ないせいなのか。いずれにせよさすがといったところです。

 

 面白いのは、トータルゾーンの奪取率でブービーに沈んだ森が、ゾーンを狭めることで3位まで再浮上してきたところですね。厳しいゾーンを除外すると順位が上がるということは、それだけ西武投手陣が厳しいゾーンで見逃し三振を取れていないということです。うーん…。

 

 西武ファンという立場でこんなことを言うのもたいへん心苦しいのですが、勝ちパターンのリリーフを除けばあれだけボロボロだった、チーム防御率リーグ最下位が定位置になりつつある投手陣をリードして、甘いコース球でも見逃し三振を奪ってきたリードはもう少し評価されても良いのかもしれませんね。

 

 また、若月とは対照的に打の捕手のイメージの強いオリックス・伏見も2位にランクイン。個人的に結構意表をついた、良く言うと型破りなリードをしてくる印象があるので、それと数値が一致しており納得感があります。

 

 森の浮上以外にもう一つ興味深いのは、厳しいゾーンを除外したことで、上位がほとんどパリーグ勢、下位がセリーグ勢に綺麗に分かれたことです。セパの投手の違いについての選手インタビューで、パリーグにはパワーピッチャーが多く、セリーグの投手は細かいコースを突いてくる」というのをよく聞きますが、そのコメントの後半を裏付けるようなデータになっていますね。

 

見逃し三振を多く奪えている球種は?

 では、甲斐と森というある意味対照的な二人が、どのような球種で見逃し三振を奪ってきたのか、その内訳を見てみましょう。(ゾーン80%)

 

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 二人とも、かなり幅広い球種で見逃し三振を奪っているのがわかりますね。出力前の予想では、甘めのゾーンの見逃し三振は「変化球待ちのところに速球が来て手が出ない」というイメージが強かったので、ストレートが半分程度というこの結果は少し意外でした。

 

 ただそうはいっても、よく見ると森の場合はストレートに加えてツーシーム・シュート・カッターを含めると約3/4が速球系なので、イメージ通りなのかもしれません。一方で全てのランキングでトップに立った甲斐は、甘めのゾーンに限定しても実に万遍なく多彩な変化球で見逃し三振を奪っており、ハイレベルかつバリエーションに富んだ投手陣の力を見事に引き出しているのがわかります。ただ単に変化球待ちのところに速い球をズドンと要求して見逃し三振を稼いでいる、というわけではなさそうですね。

 

 また、ホークスには石川やモイネロといった縦に大きく割れるカーブを決め球として使える投手がいるのも大きそうです。カーブ使いというと、かつて西武にも岸がいましたが、今では宮川くらいしか思いつきませんからね。余談ですが、Twitterで何度も書いている通り、松本航はカーブでカウントを稼げるようになれば楽々二桁勝てると思ってますので、今季は密かにそこを期待しています。

 

カウントによる重み付け

 最後はカウントごとに重み付けをしてみます。どういうことかというと、0-2とフルカウントでは、打者のストライクに対する狙いのイメージが変わってくることが予想されるためです。

 

 ボール球を3つ使える0-2と、ボールを投げたらフォアボールになってしまうフルカウントでは、ストライクに対する構え方が違うのは容易に想像がつきますよね。球審も「3球勝負はそうそうしてこない」という先入観を持っているせいか、事実としてこちらのDELTAさんの記事でも、0-2からではストライクを取られにくいことが明確に示されています。逆にフルカウントであれば、少しでも打者の狙いの中にフォアボールのイメージが入り込み、追い込まれているとはいえ多少甘い球でも見逃しやすくなってしまう可能性があります。実績のない若手によくみられる光景ですね。

 

 本稿は、「打者の狙いを外すこと=リードが上手い」と定義しているので、このカウントの要素も重み付けしていきましょう。

 

 重み付けの手順としては、80%ゾーンの見逃し三振の総数の中で、各ボールカウントの割合をもとに、希少価値に従って設定していくことにします。試合に勝つための価値という意味では、球数が3球で済む0-2からの見逃し三振を最も高くするべきなのでしょうが、では最低6球を要するフルカウントからの見逃し三振の2倍の価値があるかと言われれば恣意的な印象が否めないので、今回は機械的に希少価値で整理していきます。最も希少価値の低いものを1として標準化し、他を計算していきます。

 

 たとえば、見逃し三振が合計10個あり、0-2からのものが1つ、1-2からが2つ、2-2からが3つ、3-2のフルカウントからが4つだとしたら、最も希少価値の低いのはフルカウントになるので、0-2からの見逃し三振の価値は4/1=4となります。

 

 この考え方に従って設定した重み付けは、下表の通りです。

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 意外にも、0-2よりもフルカウントからの見逃し三振の方がわずかながら希少価値が高いことがわかりました。面白いですね。

 

 とりあえずほどよく自然な数値になったので、このまま次に進みます。

 

 各捕手の各ボールカウントにおける見逃し三振数に上記の重み付けをした結果が、こちらです。

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 順位にそこまで変動はなく、やはり甲斐が圧倒的ですね。それも、2位から14位までの差が0.58なのに対して、2位と0.65もの差をつけてのトップです。重み付けをする前の奪取率以上に傑出しているのは驚異的ですね。

 

 リードについてはファンから厳しい声が上がりがちな我らが森友哉も、この指標で最終的に堂々の3位にランクイン。もちろんこれだけをもって「森のリードはNPBで3番目に上手いんだ!」なんて主張する気は毛頭ありませんが、この結果を見るまで「森がこの順位にいるわけがない」と思っていた方は、少しは印象が変わったのではないでしょうか。

 

 今季オフは、せっかく作ったこのランキングの妥当性を検証するために、フジテレビ系S-PARKの恒例企画であるプロ野球100人分の1位において、「リードの上手い捕手」も守備とは別に取り上げていただきたいところです。

 

まとめ

 いかがでしたでしょうか。

 

 リード力の数値化という難しいテーマでしたが、論理展開の方向性は最初から見えていたので安易な気持ちで書き始めたものの 、考えれば考えるほどドツボにハマって、「せっかく書き始めたのだからなんとか形にはしよう」という気持ちと「こんな生煮えみたいな記事を世に放つのは、プロアマ問わず捕手に失礼じゃないか」という気持ちの葛藤がありました。

 

 ゆえに、これだけの長文を読破してくださった読者の方には言い訳がましくて申し訳ないのですが、「この指標がリード力なんだ!甲斐のリードはすごくて、會澤のリードはダメなんだ!」なんて胸を張って申し上げる気はさらさらございません。

 

 今回お示しした「80%ゾーンにおける重み付けをした見逃し三振奪取率」という指標は、前編で述べた前提条件が正しいと仮定したうえで初めて意味を持ちます。打者に打率、打点、盗塁といった多種多様な指標があるように、今回ご提示したものも捕手の様々な特性のうちの一つを数値化したにすぎません。

 

 打者の反応を重視する捕手もいれば、投手の良いところを引き出すのを優先する捕手もいますし、データを信じてフル活用する捕手もいます。どれが優れているというわけでもありません。

 

 今回は「打者の狙いを外す能力」をピックアップしましたが、試合の本質的な目的を考えるとそれが重要なのは間違いないと思います。ただし、投手のその日の良い球を優先的に使うタイプの捕手であれば、狙われていることを承知のうえで使うケースもあるでしょう。そして、そのまま抑えてしまうこともあります。それは紛れもない正解です。その捕手は、そのスタイルで試合に起用されるまでの信頼を得たのでしょうから。狙いを外すことは重要ですが、全てではありません。

 

 また、読者の方から「投手の投げる”間”も見逃しを誘発できる」というご意見をいただきましたが、バッティングの本質はタイミングであることを考えると、至極ごもっともなご意見だと思います。

 

 今後もそういったご意見や気づきをもとに、アイデアが浮かび次第奪三振力と同様にアップデートできればと思います。

 

 以上です。お付き合いいただき、ありがとうございました。

 

 今回は図らずも、前後編合わせて1万字にも及ぶ大作になってしまったので、次回は特に解釈とかは必要ない、ライトな記事を考えております。引き続きお付き合いいただけますと幸いです。

 

 今後とも、よろしくお願いいたします。

*1:スポナビさんの一球速報のソースコードを見ればわかりますが、捕球位置は縦横の座標で描画されているので、それを元に計算・抽出しました

捕手のリード力の数値化に関する考察(前編)

 こんにちは、DataLab管理人です。名前はまだありません。

 

 改めてまして、前回の記事「奪三振率だけでは測れない?本当の奪三振力」を読んで下さった方々、さらにRT等で反応してくださった方々、ありがとうございました。

 

 忘れられてしまわないうちに、次の記事を投稿したいと思います。

 

 前回は初稿ということもあり、張り切りすぎて長文になった上に調子に乗って数式まで使い始めてしまったがゆえに、途中で嫌気がさしてドロップアウトしてしまった方もいらっしゃったと思いますので、今回は前後編に分けて、前編は読み物中心で、後編はデータ中心になる見込みです。

 

 なお、あらかじめことわっておきますが、前置きは長いです。サクッと終わらせるつもりが、書いているうちに長くなってしまいました。プロの物書きの文章ではないので、読んでいて飽きてしまう方もいらっしゃるであろうことは容易に想像がつきます。そういう方は、戻るを押す前にせっかくなので末尾のデータだけでも見て行っていただければ、わざわざアクセスした意義が生まれるかと思います。

 

 もしかしたら前回のゴリゴリな分析記事を気に入ってくださった方もいらっしゃるかも知れませんが、まだ試行錯誤の段階ですので、どうか広い心でお付き合いくださいませ。

 

 さて、そろそろ本題に入ります。

 

 

リードの上手い捕手は誰?

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  まずはじめに想像してみていただきたいのですが、みなさんは「リードの上手い捕手」と問われたとき、誰を想像するでしょうか?

 

 現役はもちろん、ノムさんや古田といったレジェンドと呼ばれる捕手でも構いません。西武ファンなら、伊東勤も忘れてはいけませんね。とりあえず誰でも良いので、一人想像してみてください。

 

 そして次の質問です。

 

 なぜその捕手のリードが上手いと思ったのでしょうか?

 

 「試合を観ていて、思わず唸ってしまうような予想もしない配球を見せてくれるから」

 「勝率が良いから」

 「解説者やOBからリードを称賛されているから」

 「有名だから」

 「好きだから」

 

 いろいろあると思いますし、どれが正解ということもないと思います。一般的に「勝てる捕手こそが良い捕手」なんて言われたりしますが、打者を抑えられるかどうかは捕手のリードだけではなく、バッテリーを組んでいる投手の能力やチームの守備力にも大きく依存しますから、私はこれは的確な表現ではないと考えています。

 

 どれだけ相手のデータを知り尽くし、経験豊富で強肩強打の捕手がいたとしても、草野球のチームを率いてプロに勝つのはほぼ不可能だと思いますが、だからといってその捕手が「良い捕手ではない」ということにはなりません。あれはあくまで、実力の拮抗したプロ同士という前提があるからこそ成り立つ表現です。

 

 これは、いわゆる順問題*1として100%正解となるリードを導出することは困難であるがゆえの表現だと考えています。

 

 仮にテレパシーで打者の思考を読み取れる捕手がいるとして、アウトローの逃げていくスライダーを待っていることが分かっている場合に、捕手はインハイにストレートを要求することはできます。しかし、できるのはそこまで。

 

 当然のことながら要求通りのボールが来る保証はありませんし、すっぽ抜けて当ててしまうかもしれません。要求通りのボールが来たとしても、打者は咄嗟に体が反応してヒットにしてしまうことだってあります。正解になりそうなことでも、簡単に不正解にされてしまうのです。逆も然り。

 

 裏をかこうとしてヒットを打たれて「ダメなリード」の烙印を押されたとしても、もしセオリー通りのリードを打者が読んでいたとしたら、HRにされていたかもしれませんから、相対的には正解だったという無茶な見方すらできてしまいます。そして結局、何が本当の正解だったのかは、永遠に謎のままです。

 

 つまり、投手の能力も含め、捕手ではコントロールできない不確定要素が多すぎるがため、捕手はあらかじめ確定している与条件のみから、数式を解くように正解を求めるのは不可能なわけです。導出できるのはあくまで、経験や洞察を頼りにした最適と”思われる”解だけです。

 

そもそも上手いリードってなんだろう? 

 早くも、自分で書いていてよくわからなくなってきたので、いったん頭の整理をすべく、より原始的な視点に立ち返ってみましょう。そのために、まず「上手いリード」とは何なのかを定義してあげる必要があります。

 

 野球は点取りゲームであり、基本的により多くの得点と、より少ない失点を目指すものです。そして失点を減らすには、ハイレベルな守備が必要です。捕手のリードも、その一つの要素です。

 

 しかし「ハイレベルなリードをするためには?」という掘り下げをしてしまうと早くも行き詰ってしまうので、視点を変えてみます。

 

 失点を減らすということは、相手の得点を邪魔するということです。相手は得点したいがために、あれやこれやと策を弄してきます。ゆえに相手打者は、その策を実現するために何らかのヴィジョンをもって打席に立っているはずです。ランナーがいなければヒットや粘っての四球、ランナーがいればバントやコースを絞っての右打ち、二死ランナーなしなら長打狙い、といった具合です。少しでも得点の確率が高くなりそうなことをしようとしてきます。

 

 よって、相対するバッテリーが”本質的に”目指すべきは、ヒットを防ぐことでもランナーを出さないことでもなく、相手が思い描くヴィジョンの実現を阻害すること、すなわち「狙いを外す」ことになります。ヒットを防ぐ、つまり凡打に打ち取るというのは、あくまでその結果の一つです。全盛期の藤川球児のストレートのような、狙っても打てないようなボールでもあれば話は別ですが、そんな投手はごく一握りなので、とりあえずは例外として扱いたいと思います。

 

 前述の通り、狙いを外したところで必ずしも好結果に結びつくとは限りませんが、少なくとも確率を下げることはできるはずです。よって、ここはひとまず「上手いリード」を「相手の狙いを外すリード」として一段階具体化して定義してみましょう。

 

 しかし、仮にこの定義が正しかったとしても、是非を論ずる数値に落とし込むにはまだ課題があります。「実際に打者の狙いを外したかどうか」が外からではわからないためです。打席ごとにつぶさに捕手と打者にインタビューして、その答え合わせでもしない限り、狙いを外したかどうかを客観的に評価する術はありません。

 

 考えてみれば、「打者の狙い」というのもひどく曖昧なものです。もし逐一答え合わせをしたところで、打者が「インコースの直球を狙っていました」とでも答えてくれればよいのですが、「追い込まれていたので、直球待ちの変化球対応を心掛けていました」と答えた場合、変化球要求が正解だと容易に断定することもできません。

 

 ゆえに、結局「リードの良し悪しは結果論」と片付けられてしまうのだと思います。「勝てる捕手が良い捕手」という通説は積極的な表現ではなく、順問題的にリードの良し悪しを評価する術もなければ、打者の狙いを外したかどうか検証する術もないがゆえの「そう評さざるを得ない」という消極的な表現だと思っています。

 

 でもやっぱり、熱心なプロ野球ファンであるほど、リードの是非についてあーだこーだと口を出したくなってしまいますよね?かくいう私も同じで、「自分こそが絶対に正しいんだ!」という思い込みさえなければ、ファンの間で議論をして盛り上がるのは大いに結構だと思います。

 

 さて、議論が起きそうな場面といえば、たとえばこんな場面を想像してみてください。

 

 本当にリードは結果論なのか

 福岡に乗り込んでのビジターゲームで、場面は1点リードの9回裏。

 

 マウンドには絶対的守護神・増田が上がっており、受けるキャッチャーは岡田。

 

 下位打線からあっさり二死を奪ったものの、ストレートを連打され、四球も絡んで二死満塁。

 

 一打サヨナラの大ピンチで、迎えるは球界最高峰のスラッガー・柳田。

 

 それでも臆することなく自慢のストレート2球で追い込み、0-2で迎えた3球目。

 

 岡田はゾーンのアウトローに構え、それに応えミットめがけて渾身のストレートを投げ込んだ増田だったが、柳田は見逃さずに踏み込んでバットを振りぬき、引っ張った鋭い打球が右中間に飛んでいく。

 

 サヨナラを確信し、歓声に沸くライトスタンド。

 

 しかし、絶妙なポジショニングからそこに猛然とチャージしたライト・木村の見事なダイビングキャッチで窮地を救い、辛くも西武の勝利でゲームセット。めでたしめでたし、閉店ガラガラ。

 

 

 さて、あくまで作り話なので現実性はさておき、みなさんはこのリードをどう評価するでしょうか?

 

 「抑えたのはたまたまで、ボール球も使えるのに柳田に3球連続ストレートで勝負するなんてありえない。当たりも良かったし、抑えたのはたまたま。」

「いやいや、柳田が『3球勝負はありえない。増田は押し出しするような投手ではないし、何球か見せてくる』と考えていると踏んで、意表を突いたのかもしれない。ありえないと一蹴するようなリードではない」

「決め球はストレートなのでそれで勝負するのはいいけど、1、2球は見せ球を挟むべき」

「リードなんて結果が全て。スライダーやフォークを打たれない保証はどこにもない。押し出しのリスクもあるのだから、必ずしも見せ球は必要ない。あれは最高のリードだった。」

「経験のある岡田の判断なのだから、良いリードに決まってる。」

 

 考えられるのは、こんなところですかね。まぁ、勝てば官軍、実際に起きてもそこまで火種になることもないでしょうけど、これが抜けていればそれはもうネットのコアなファンは盛り上がることでしょう。

 

 もし私がこの場面を目の当たりにしたなら、3つ目に近い意見になると思います。「近い」というのは、リードというのは1試合の4打席前後の内容、さらにはシーズンを通した「流れ」を汲むべき*2であり、単一の打席のみで正解を導き出そうとすること自体が無意味だと考えているためです。あくまで定石の一つにすぎません。

 

 もしこの試合後に柳田と岡田にそれぞれインタビューしてみれば、岡田のリードが順問題的に理にかなった良いリードだったのか、ただの結果オーライだったのかは判断できそうですが、なかなかそうはいきませんよね。意見が割れても全く不思議ではありません。

 

 しかし、もしこの打席の結果がライトライナーではなく、ど真ん中の見逃し三振だったならどうでしょうか。

 

見逃し三振の特異性   

  安打にしろ凡退にしろ、ほとんどのケースにおいて、攻撃および守備双方の視点から「狙い通りだったもの」「狙いがはずれたもの」と「成功」「失敗」が混在しています。だからこそ、スコアだけを穴が開くほど眺めたところで、一つ一つの結果が、捕手の狙った「上手いリード」の産物なのか、そうでなかったのかは判断できません。

 

 しかし、見逃し三振という結果は少々趣が異なります。コースギリギリのものであれば、打者がボールと判断しただけというケースもありますが、「なんで手を出さない!?」と声が出てしまうような甘いボールの見逃し三振も散見されます。

 

 こういった見逃し三振こそ、まさに捕手が打者の狙いを外した証に他なりません。追い込まれている打者は、ゾーン内のボールには必ず手を出さないといけないという明確なヴィジョンを持っているはずであり*3、想定している球種であれば当然手を出さなければなりませんが、捕手の選択した球種によってそれをかわしたわけです。

 

 コースは投げてみるまでわかりませんが、投手に首を横に振られでもしない限り、球種は完全に捕手の意思のみでコントロールできるものです。見逃し三振を狙ったかどうかはわからなくても、打者の狙いを外したのはほぼ間違いないと言ってよいでしょう。こういった見逃し三振こそ、投手の能力をはじめとする外乱の少ない、「捕手の好リードを客観的に判断できる結果」だと思います。

 

 だからこそ、さきほどの増田vs柳田の例において、同じアウトでもライトライナーではなく見逃し三振であれば、賛否が割れることはほとんどなく、多くのファンが「意表を突いた度胸のあるリード」と手放しに称賛するのではないか、と考えています。(違ってたらすみません)

 

 ところで、「打者の狙いを外したアウト」と同じくらい「バッテリーの狙い通りのアウト」も評価したくなりますが、これらは似て非なるものだと思います。狙い通りというと、内角球で詰まらせての併殺や、ストライクからボールになる変化球による空振り三振がありますが、それを評価しようとすると、投手がリードに応えられる能力をもっているかどうかという元の議論の問題点に立ち戻ってしまいます。単純に、投手力の高いチームの捕手がそのまま高い評価を得ることになり、チーム防御率と似たような結果に落ち着きそうで面白くないので、いったんこれらはフォーカス外とします。検証は、本稿への反響と、機会があれば追って…。

 

 したがって、今回は投手や守備の能力に影響されにくい、できるだけ純粋な捕手の能力を評価するために、「バッテリーの狙い通り」にいったことではなく、捕手だけの選択により「打者の狙いを外した」こと、すなわち「捕手の見逃し三振奪取の多さ」にフォーカスして書き進めていきたいと思います。

 

見逃し三振を多く奪った捕手は?

 

 前置きがとても長くなりましたが、まとめると下記のような感じです。

 

【ここまでの要約および以後の前提】

①リードの上手さとは、打者の狙いを外すことである。

②捕手が打者の狙いを外したかどうかは、結果だけでは客観的に判断できない。

③甘いコースの見逃し三振は、投手の能力に関係なく捕手の選択球種に依るので、打者の狙いを外した捕手の能力として評価する。

 

 所詮は素人の考察なので、異論反論あるのは重々承知しておりますが、これ以降はこの前提に沿って展開していきますので、ある程度納得できる方のみ読み進めてください。

 

 さて、ここでようやくデータの登場です。2020年レギュラーシーズンのセパ両リーグにおける、捕手の見逃し三振奪取数ランキングは下記の通りです。*4

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 とりあえず純粋な奪取数だけであれば、常勝軍団ホークスの正捕手の座をほぼ確立した甲斐が圧倒的ですね。また、西武ファンの間でよくリードの是非が取りざたされる森友哉ですが、奪取数は甲斐につぐ全体2位となっています。

 

 ただ、今の球界にはかつての古田や阿部、城島のような絶対的な正捕手が不在で、併用が当たり前になりつつあるので、出場試合数等も考慮しないと実体は見えてこないことは容易に想像がつきます。

 

 そのあたりの細かい分析および考察は、後編にて。

 

おわりに

 長くなってしまったので、とりあえず今回はここまでです。最後までお付き合いいただいた方々、ありがとうございました。ほんの少しでも面白いな、と感じてくださった方は、私のモチベ維持のために、いいねでもRTでもレスでもスターでも何でも結構なので、反応していただけると嬉しいです。

 

 後編では、対戦打者数も考慮した奪取率、カウントに応じた重み付け、本来対象とすべき「甘いコース」に限定した奪取率等をお見せしながら、具体的な数値に基づき「打者の狙いを外せる捕手」は誰なのか、考察を進めていきたいと思います。

 

 次回もよろしくお願いいたします。

*1:入力から出力を求める問題のこと。例;坂道の上からボールを転がしたときに、重力や傾斜、坂道の形状等の与条件から経路を予測して到着地点を求めるのが順問題で、到着地点から出発地点を求めるのが逆問題。

*2:だから捕手は大変だって言われるんですよね。単純に相手打者の不得意な球種やコースを覚えてそこを突くだけで抑えられるなら、そこまで難しくはないはずです。

*3:2死のときのセの投手といった、バットに当てることを自ら避けるような特殊な状況は除きます

*4:スポナビ様の掲載情報をもとに構築した管理人のデータベースより、シーズンの半分の60試合以上出場した捕手のみ抜粋。

奪三振率だけでは測れない?本当の奪三振力

 こんにちは、Datalab管理人です。

 

 「堅苦しくないデータ検証ブログ」を目指していますが、なんか名乗っていてすでに堅苦しいので、親しみやすいハンドルネーム考えた方がいいですかね…。

 

 まぁ本編はそうならないように注意して書いていきますので、お時間ある方はどうぞお付き合いくださいませ。

 

 本稿の目次は下記の通りです。

 

 

 では早速、本題に。

 

奪三振の能力を測る指標

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 今回はタイトルの通り、「奪三振力」をテーマに考察したいと思います。

 

 みなさんは、三振を奪う能力を表す指標と問われたら、何をイメージされるでしょうか?

 

 セイバーメトリクスが普及した現代においては、色々と専門的な指標があるのでしょうが、既存のものでは「奪三振率」がわかりやすく、有名ですよね。少なくとも自分はそれしか知りません…。

 

 その定義は、下記の通りです。

 

\displaystyle{奪三振率= 奪三振数 \times \frac{9}{投球回数}}

 

 つまり、「一人の投手が9イニング投げた場合にどれだけ三振を奪えるか」を仮想的に示した数値となっております。奪三振率よりも、MLBの表記であるK/9の方が正確な表現なのかもしれません。一般的には、9を超える、すなわち1イニングあたり1つ以上の三振を奪える投手は奪三振能力が高いと評されている気がします。

 

 2020年シーズンにおける、パリーグ主力投手の奪三振*1は下記の通りです。数字が細かいので、必要であれば拡大してご覧ください。

 

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 やはり150km/h超えの球をバンバン投じてくる剛腕は数値が高いですし、球を低めに集めたり動かしたりしてゴロを打たせるグラウンドボーラーは数値が低めになりますね。数値は高いに越したことはありませんが、低いからといって必ずしも悪いということもありません。

 

 さて、このように一応順位をつけてみましたが、みなさんのイメージと合致しているでしょうか?「○○より××の方が上だと思ってたけどなぁ」といった感想があれば、とりあえず覚えておいてください。率直に申し上げて、西武ファンである私の場合、「平良はもっと高いんじゃね!?」と思いました。同じ感想を抱いた方は、長いですが読み進めると幸せになれるかもしれませんので、どうかこのままお付き合いください。

 

奪三振率だけではわからないこと

 

 今回このような検証をしたきっかけは、その違和感が正しいのか、数字を使って定量的に確かめてみたかったためです。

 

 というのも、奪三振率という指標は、前述の定義の通りあくまで「奪三振数を9イニング分に換算した」ものです。「三振を奪う能力の高低である」とは誰も言ってません。では、そのギャップの原因は何なのでしょうか。

 

 様々な要素があるとは思いますが、今回は「打席の結果が三振になるかどうかは、投手だけでなく打者の能力にも大きく依存するのに、それが反映されていないためだ」*2という仮説を立ててみました。

 

 奪三振数という成績は、当たり前ですが誰から三振を奪っても一つ増えるだけです。世界のアベレージヒッターであるイチローから奪っても、ファームから上がりたてでプロ初ヒットすら放っていない緊張でガチガチの高卒ルーキーから奪っても、一つは一つです。言うまでもなく、両者の難易度は比べるまでもありませんが、イチローから三振を奪ったからといって、二つ記録されることも当然ありません。

 

 まぁ上記は例示としては極端ですが、例えば2020年シーズンで最も三振の多かったスパンジェンバーグは445打席で150三振を喫している一方で、首位打者に輝いた吉田正尚はスパンジェンバーグより多い492打席でたったの29三振なので、同じ主力打者でも奪三振の難易度に大きな差があるのが見て取れます。

 

 奪三振率という指標に、こういった「打者の性質」は加味されていません。いくら千賀や山本といえど、もし吉田のような三振の少ない打者とばかり何度も対戦すれば2020年シーズンような奪三振率を残すことは難しいでしょう。もちろんそんなことはありえませんし、先発投手であれば1番から9番まで幅広く対戦する機会があるので、シーズンを通してみれば難易度が平準化されることも十分考えられますが、検証してみないことにはわかりません。たまたま三振しやすい打者との対戦が多くて奪三振能力を過大評価されている投手もいれば、逆のケースもあるかもしれません。

 

 そこで今回は、打者の三振率も考慮した、より本質的(と思われる)奪三振という新たな指標を作ってみて、奪三振率とどのような違いが生じるのかを確認してみることにしました。

 

 では、具体的にどのような指標とするのが望ましいのでしょうか。

 

奪三振力の定義

 

 今回私が考えた奪三振K _ {p}の定義は下記の通りです。

 

\displaystyle{ K _ {p}= \frac{1}N \sum_{i=1}^n \frac{1}k _ {i} }

 

 すみません、やっぱり堅苦しいですね。Nは対象の投手が対戦した打者の総数、nが対象の投手の奪三振数、k _ {i}が三振を喫した打者の三振率(シーズンの三振数/打席数)になります。この数式の意味するところは、一つ一つの三振を1としてカウントするのではなく、三振を奪った打者の「三振しない力*3」として加算していき、対戦打者数で割るというものです。三振しない力は、1を三振率で割った数値、すなわち逆数になるので、打席数/三振数と一致します。*4

 

 例えば、先に例示したスパンジェンバーグの三振しない力は445/150≒2.97で、吉田正尚は16.97になります。すごい差ですね。

 

 そして、ある投手がスパンジェンバーグと5打席対戦し三振を3つ、吉田正尚と 4打席対戦し三振を1つ奪ったとすると、奪三振K _ {p}は下記のように計算されます。

 

\displaystyle{K _ {p}= \frac{1}{(5+4)}(2.97×3+16.97×1)}

 

 このような計算を、シーズン中の全ての奪三振振り逃げも含む)に対して行うわけです。もちろん、手計算では土台無理なので、コンピュータの力を借ります。シーズン中の試合データを溜め込んだデータベースを独自に作成しておりますので、そこからSQLというやつを使ってお目当てのデータを引っこ抜き、整理していきました。 

 

奪三振力の計算結果

 

 それでは早速、2020年シーズンパリーグ公式戦における、奪三振力の計算結果を見てみましょう。なお、「こんな細かいのいちいち見てられない!結論はよ!」という方は、下の「奪三振率との相関は?」という章までジャンプしていただいても結構です。

 

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やはり今季大活躍のモイネロが、頭一つ、いや二つくらい抜けていますね。左腕でありながら150km\hを常時超える直球を持ち、フジテレビ系S-PARKの恒例企画・プロ野球100人分の1位の変化球部門においては千賀のお化けフォークを抑えパリーグ1位となったカーブもあるのだから、納得の結果です。もはや「相手が誰であろうが関係ない」といわんばかりです。

 

 注目すべきは、見事新人王に輝いた我らが平良海馬。奪三振率では7位でしたが、この奪三振力では堂々の2位までランクアップ。パを代表する強打者である柳田や浅村から真っ向勝負で三振を奪っている印象が強いですが、吉田・中村晃・近藤・西川といったコンタクトの上手い巧打者からも三振を奪えていることが反映された結果だと思われます。

 

 全体的な印象としては、投手力の充実しているソフトバンクオリックス勢が上位に多く、以前Twitterでもつぶやいたストレート空振り奪取率とある程度相関がありそうかなといったところです。ストレートと変化球の威力は掛け算なので、空振りを奪えるストレートがあると変化球も活きるんですね。

 

 また、奪三振力のヒストグラム*5がこちら。

 

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 2.0を超えて一人だけ右端にいるモイネロを除けば、そこそこ正規分布っぽい形になっているので、指標としてそんなに的外れでもなさそうかなという印象です。だからこそ、そこから大きく逸脱したモイネロの傑出度が際立ちますね。

 

 余談ですが、西武ファンの管理人としては下位の投手が西武だらけなのが非常に残念です。特にドラ1コンビの今井・松本航は、本格派の投球スタイルを考えるとこの位置にいてはいけませんね。来季の巻き返しに期待しましょう。

 

別の見方をしてみる

 

 ただ数値の高い投手を比べるだけでは面白くないので、もう少しいじってみましょう。

 

 奪三振力は、一つ一つの奪三振に打者の「三振しにくさ」で重み付けをしたものではありますが、それでも打席数で割る以上、三振数が多い分数値は高くなります。

 

 そこで、奪三振力を奪三振率で割ってみます。すると何が見えてくるでしょうか?

 

 分母の「奪三振数に比例して増える数値」に対して、分子の「三振をしにくい打者から三振を奪うほど上がる数値」が高いかどうか、すなわち「三振を奪いにくい打者から三振を奪えているか」ということです。奪三振の総数自体は少なくても、三振しにくい打者に有効というのは、それはそれで価値がありそうですよね。

 

 その算出結果がこちらです。

 

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 上位の顔ぶれがガラッと変わっていますね。単純に奪三振率で割るという性質上、どうしても奪三振の多い投手は順位が下がりやすくなってしまいますが、それでも上位に残っているモイネロ・平良はさすがの一言。

 

 興味深いのは、トップ3人がいずれも全く違うタイプということ。抜群の制球力と決め球のカットボールを武器に凡打の山を築く唐川、アンダースローから多彩な球種を操り、緩急自在の投球で打者を翻弄する牧田、そして変則フォームと落差のあるフォークを武器にブレイクした森脇。

 

 共通点は右投げということと、勝ちパターンのリリーフであることくらいですが、唐川や牧田はプロの経験値も豊富で、犠牲フライも打たせたくない、ここぞというときに粘っこい打者から三振を奪う投球術を持っているのかもしれませんね。

 

 チェン・ウェインや榎田は投球回数がギリギリなので偶発的な参考値として除外すれば、TOP10はほとんど勝ちパターンのリリーフになっています。やはり試合終盤の勝負所では、代打も含め簡単に三振してくれない打者と多く対峙するため、そこで1シーズン戦い抜いた投手の数値が上がるのは必然なのかもしれません。

 

 そういった意味で、ここに割って入っているロッテ・小野やホークス・板東が来季どう成長していくのか、注目です。

 

奪三振率との相関は?

 

 最後に、本稿の主題である「奪三振率で奪三振の能力は測れているのか」について検証するため、奪三振率の順位が奪三振力では順位がどう変わるのかを見てみましょう。

 

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 奪三振率を奪三振力に換算した際、順位が上がれば青、下がれば赤になっていて、色の濃さが変動の大きさを表しています。個人差はありますが、結構順位が変動しているのがわかりますね。

 

 嘉弥真は14位から6位までランクアップしており、試合終盤の犠牲フライすら許したくない重要な局面を任され、左打者から幾度となく価値ある三振を奪ってきた証でしょう。

 

 また、増田・益田・森といったAクラスチームのクローザーが軒並み10位程度ランクアップしているのも興味深いですね。前章で述べた傾向と同様、やはり長い間タフな場面を任された分、嘉弥真と同様に価値ある三振を奪ってきたということなのでしょう。

 

 逆に大きく順位を落としたのが、勝ちパターンから外れてしまった吉田一将(26位⇒51位)や定着しきれなかった宮川(22位⇒40位)で、来季は終盤の勝負所で繰り出される巧打者からも三振を奪える球威やキレを身につけて、セットアッパー争いを制してほしいところ。

 

 また、順位変動のヒストグラムがこちら。

 

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 細かい順位で見れば結構変動があったものの、こうして見ると順位変動の分布は0付近に集中しているので、打者の性質を考慮した奪三振力の方がより奪三振能力の本質に近いと仮定した場合において、奪三振率は奪三振の能力の大枠を簡便に把握する指標として有効であることが確認できました。

 

まとめ

 

 いかがでしたでしょうか。

 

  今回の検証を通して、奪三振率は、非常にシンプルな計算で三振を奪う能力を測ることができ、指標として信頼できるものであるということがわかりました。はじめに」の記事でも述べたように、いちプロ野球ファンがプロ野球を楽しむために見る指標として「わかりやすさ」は重要だと考えておりますので、今後も選手の成績を確認する際には十分参考にして良いものだと思います。贔屓のチームの選手の成績をチェックする中で、奪三振率が高ければとりあえずポジっておきましょう。

 

 一方で、「打者の三振しにくさ」で重み付けをしてあげることで、より本質的な「三振を奪う力」を表現できる可能性も示せたかなと思います。何より、西武が誇るドクターK・平良海馬の順位が上がりましたからね!

 

 とまぁそれは冗談として。

 

 ファンとしてのバイアスはそれはもう多分にかかっていると自覚しつつも、モイネロの次と言われればやはり平良を連想しますし、私の印象と合致したので、個人的には奪三振力の方がよりドクターKのイメージに近いかなと思います。

 

 記事の冒頭で、奪三振率において「○○より××の方が上だと思ってたけどなぁ」という感想を抱いた方は、改めて奪三振率と奪三振力のランキングを見比べてみてください。そしてもし、奪三振力の方がよりイメージに近いものであったなら、分析者冥利に尽きるというものです。 

 

 今後はアイデアが浮かび次第随時この指標もアップデートしていきたいと思いますが、この「重み付け」は打率をはじめとした他の指標にもかなり応用できそうなので、そこもおいおい検証のうえ、ご報告できれば。

 

 最後に、長ったらしい本稿を最後まで読了していただき、ありがとうございました。よろしければ、リツイートでも何でもいいので何かしらポチっていただけると今後の励みになりますので、何卒よろしくお願いいたします。

 

 それでは。

*1:スポナビ様より抜粋。パリーグで対戦打者数100人以上の投手が対象。

*2:もちろん捕手の配球にも依存する部分はありますが、定性的で評価が難しいのと観点が発散するリスクがあるので、今回はフォーカス外としております。

*3:コンタクト率としてしまうと意味が変わってしまいますし、他に良いネーミングが思いつきませんでした。ご容赦ください。

*4: 当初は三振しない率(1-三振率)として定義しようかと思いましたが、これだとあまり差が明確にならない(上記の例だとスパンジェンバーグ0.663に対して吉田正尚0.941)ため、逆数をとることにしました。

*5:ある集合の分布を表したグラフのことです。この例だと、横軸が奪三振力になっていますので、「奪三振力が0.5~0.7の投手が10人いる」という見方になります。