Lions Data Lab

選手レビューや、一風変わったデータ分析の発信を目指しています

【指標考案】wK/9も計算してみたらちょっと面白かった

どうも、LDLです。

 

2月の更新は、1月の記事での予告通り、初稿「奪三振力」をセイバーっぽくwK/9にリバイスしてみよう、という記事になります。本当はそこから一気にwK/BBやwK-BB%も算出・掲載しようかと思ったんですが、wK/9だけでそこそこの分量になったのでいったんそこで切る形としました。

 

初稿でご紹介した奪三振力は、全ての三振を平等に扱う奪三振率と異なり、対戦打者の"三振しにくさ"も考慮に入れているという点で、投手の奪三振能力を測る指標としてより本質的だ(と筆者が勝手に思っている)と述べました。

 

ただ、「相対的に誰が優れているかさえわかれば良い」という安直な考えで作ってしまったため、前回のwBB/9と異なり元の指標と次元が合っていないという問題点に気づいたので、同様のやり方でwK/9(weighted K/9)としてリバイスします。

 

それではいってみましょう。

 

 

K/9と奪三振力、wK/9の定義と違い

wK/9の話をする前に、まず基本となるK/9をおさらいしておきましょう。

 

K/9はいわゆる奪三振率というやつで、定義は「投手が9イニングで奪える平均的な三振数」になります。数式にすると下記の通りです。

 

\displaystyle{K/9= 奪三振数 \times \frac{9}{投球回数}}

 

これは読んで字のごとく投手の三振を奪う能力を簡単に算出できる(とされている)指標で、ある程度プロ野球を観てきた方であればすでにご存じかと思います。

 

この指標の優れている点は、なにより"計算が簡単かつわかりやすい"ことにあると思います。

 

例えば、下記のような投手A・Bがいたとします。

 

投手A:147イニング・130奪三振

投手B:112イニング・96奪三振

 

この4つの数字をぱっと見ただけでは、よほど算数のセンスに優れた方でない限りどちらの奪三振能力が高いかは判断できないと思いますが、上式にこの数字を代入して奪三振率、すなわちK/9を計算してあげると、Aは7.96、Bは7.63となり、Aの方がやや優れていることが一目でわかるようになりますよね。

 

これは非常に簡単な例にはなりますが、"多くの情報を集約して見通しを良くする"という指標の一つの存在意義を実感いただけたかと思います。

 

ただし、情報を集約する過程で、往々にして考慮されていない、あるいは抜け落ちてしまう情報もあります。例えば、今回取り上げるK/9においては、どんなにコンタクトの上手い粘っこい打者から奪った三振も、いわゆる扇風機と揶揄されるような三振の多い打者から奪った三振もすべて等しく1としてカウントされているため、対戦した打者の性質は考慮されていません。

 

先ほど例示したA・Bの2投手において、対戦打者まで細かく見ていったとき、Aが運良く"扇風機"との対戦が多かったというだけであった場合、本質的な奪三振能力はBの方が上だった可能性もあるわけです。一つ一つの奪三振に対して打者の性質を考慮しないK/9をそのまま「奪三振能力を示した指標」と短絡的に解釈してしまうと、対戦した打者の性質の偏りによっては実態と乖離してしまうリスクがあるというわけですね。

 

K/9はあくまでシーズンの通算成績をもとに算出した9回を投げた場合の奪三振数の期待値であって、奪三振能力とイコールではありません。この観点というか解釈は、指標というものを見るうえで非常に重要です。以前XにてGG賞についてのポストで述べたように、UZRは「守備の上手さを示す指標」とは定義されていない、ということと同じですね。

 

そして、上記の観点を"重み付け"という形でK/9に盛り込んだのが、初稿の"奪三振力"ということです。詳細についてはそちらをご覧ください。

 

さて、前置きはこれくらいにして、ようやく具体的な計算に入っていきます。初稿で定義した奪三振の算出式は下記の通りです。

 

\displaystyle{ K _ {p}= \frac{1}N \sum_{i=1}^n \frac{1}k _ {i} }

 

ここで、Nは対象の投手が対戦した打者の総数、nが対象の投手の奪三振数、k _ {i}が三振を喫した打者の三振率(シーズンの三振数/打席数)になります。

 

投手の奪三振能力を相対的に測る分にはこのままでも良いのですが、これは前述の通りwBB/9と異なりベースの指標であるK/9と次元が揃っていないため、「重み付けしたK/9」という指標になるように定義式を下記のようにいじります。

 

\displaystyle{ wK/9 = \sum_{i=1}^n \frac{1/k _ {i}}{1/\bar{k}} \times \frac{9}{投球回数}}

 

nが対象の投手の奪三振数、k _ {i}が各奪三振における打者のK%(シーズンの三振数/打席数)、\bar{k}は全打者のK%の平均値になります。

 

逆数のところを見やすく整理するとこんな感じですね。

 

\displaystyle{ wK/9 = \sum_{i=1}^n \frac{\bar{k}}{k _ {i}} \times \frac{9}{投球回数}}

 

基本的にK/9とBB/9は「9イニング換算の期待値」という構造が同じなので、wK/9も前稿のwBB/9と同様になります。K%が平均値である打者から奪った三振はそのまま1奪三振とカウントされますが、粘っこい打者からのものは1以上になり、逆も然りです。

 

こうしてやることで、K/9が単純に「9イニング換算の期待値」であるのに対して、wK/9は「平均的な数の三振をする打者だけを相手に9イニング投げた場合の奪三振数の期待値」といった具合(厳密には異なりますが、そんなイメージでとらえていただければ…。)に、投手ごとに異なる対戦打者の性質をなるべく排すことにより解像度が上がるというわけです。

 

ただ、シンプルなK/9であっても、投球回数が多くなればなるほど様々なタイプの打者と対戦することになるのでトータルで見ればwK/9も似たような数値になるかもしれませんが、さぁそこはどうなるか?次の章で見てみましょう。

 

K/9とwK/9の比較

まず、K/9とwK9に加え、その比率の一覧表を見てみましょう。

 

2023年パリーグレギュラーシーズンにおいて、100打席以上対戦のあった投手を対象とし、wK/9の降順にヒートマップを付して左から3列に並べてありあす。また、「比率」というのはwK/9をK/9で割った値で、数値が高いほど「三振しにくい打者からも三振を奪った投手、対戦相手次第でもっと三振を奪える可能性がある投手」ということになります。

 

ざっと眺めた感じ、wK/9が高ければK/9に対する比率も高く、逆も然りですね。K/9の高い投手は概ね三振しにくい打者からもしっかり三振を奪えているため、比率が高くなる傾向にあるようです。

 

K/9上位層の中で比率が低いのが、0.93のオリ本田投手、0.95のオリ山岡・ロッテ増田投手、0.96のロッテ横山投手あたりで、山岡投手以外は対戦打者が偏りがちなリリーフというのも、wBB/9と同様の傾向です。今シーズンはどうなるか、注目ですね。

 

一方wK/9の下位層で比率が高いのは、我らが平井プロと昨季飛躍したハム鈴木投手が1.12で並びトップ、続いて1.09のSB有原投手、1.07のハム加藤投手あたりですね。こちらは一転して先発が多いのはちょっと気になります。K/9が示す通りいずれも本格派というわけではないですが、しっかりとしたペース配分でここぞの場面でしつこい打者からも三振を奪う術を心得ているということなのかもしれません。

 

西武ファン目線だと、K/9は中位ながら比率は2位1.12の青山投手に期待です。昨季はクローザーも任されながら与四球の多さが課題でしたが、あのスプリット単体だけ見れば十分通用するキレを備えていると思うので、そこの精度を上げてタムイチさんのように飛躍してほしいですね。

 

球団ごとの特色

次に、完全に個人単位で集計したこのデータを球団ごとに分けてみたらどうなるか?試しにやってみたら、少し面白い傾向が見えてきたのでご紹介します。

 

まずは↓の表を眺めてみてください。何か気付くことはあるでしょうか?

 

そう、楽天投手陣の圧倒的な赤さです。

 

2023年の楽天打線は三振数合計が937とリーグで最も少ない(最も多い日ハムは1111)ので、三振を奪いにくい自軍打線と対戦していない分、対戦している他球団よりwK/9が悪化するのは一見自然に見えます。

 

ですが、打線の三振数が楽天に次いで少ないオリックス(同2位986)は赤と青が半々程度で色も薄いですし、次いで三振の少ないロッテ(同3位1011)に至っては青の方がやや目立つくらいです。自軍と対戦しないこと以外にも原因があると考えた方が自然でしょう。

 

そもそもこのwK/9という指標は、「対戦打者の三振しにくさに応じて四球の価値を重み付けしたもの」なので、正しく定義・計算できているのであれば自軍と対戦していないことも関係ないはずです。相手が三振しやすい打線なのであれば、相応の数の三振を奪えば良いだけですからね。自軍以外にも三振しにくい打者は当然たくさんいるわけで、比率が低いということはそこから三振を奪えていないというチーム全体の課題が見えてきます。その投手陣にあってリーグ屈指の奪三振能力を誇る松井投手が渡米してしまった今季、他の投手が台頭してこないとかなり苦しい戦いを強いられそうですね。

 

逆にハムなんかはすごくて、ほとんどが比率1を超えているうえに全体でもトップクラスといえる1.1超が6人もいます。ロッテも比率が良好な投手が多く、特に坂本投手なんかは素晴らしいストレートがあり、敵ながら楽しみな投手ですね。

 

西武で楽しみなのは、青山投手以外だと隅田投手今井投手奪三振数は一般的にイニング数以上になるとドクターKというイメージが強くなりますが、この2投手はK/9こそわずかに及ばないものの、wK/9になるといずれも9を超えてきます。相手のめぐり合わせ次第ではその域に達することも十分可能ということですね。

 

2投手ともすでに強力なボールを備えていますので、怪我無く相応のイニング数さえこなせれば奪三振王を狙えるポテンシャルはあると思います。今シーズンに期待が高まりますね。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。

 

wBB/9と同様にK/9に重み付けという考えを付加してみましたが、その数値のスケールをほぼ維持しつつも上手いこと差別かもできて、新しい情報を浮かび上がらせることができたかな、と思います。

 

前述の通りwBB/9とwK/9を使ってwK/BBやwK-BB%なんかもご紹介したいなと思いますが、せっかく開幕も迫ってきていることですし、次回は昨季イマイチ当たらなかったNEXT BREAK系の記事に再チャレンジしたいと考えております。それらの指標はシーズン前半戦を終えたあたりで、今季の新鮮な情報をベースに改めて整理してお送りしますね。

 

それではまた!

 

 

【wBB/9】与四球の指標を改良してみた

今更すぎますが、新年あけましておめでとうございます。

今年も最低月1更新は維持できるよう運営していきたいと思いますので、Xアカウントともどもよろしくお願いいたします。

 

さて、新年1発目はここのメインコンテンツである指標考案シリーズです。

 

これまで、セイバーメトリクスにおいてもはや市民権を獲得したといっても過言ではないものの算出手順が複雑で理解の敷居が高いWARやUZR等と異なり、誰でも入手可能な情報をもとにシンプルなロジックで算出できるオリジナル指標の考案を標榜し、初稿の奪三振力やリード力、やらかし度などいろいろと考案してきましたが、その新ネタになります。

 

まあ新ネタといっても、私のような凡人の頭脳に泉のようにザクザクアイデアが湧いて出てくるわけでもなく、今回は奪三振力の考え方をそのまま与四球の指標に当てはめたらどうなるか?というネタになります。

 

それではいってみましょう。

 

奪三振力の考え方」とは?

前述の通り、奪三振力は当ブログの初稿で取り上げたものです。リンクを貼っておきますので、未読の方はまずそちらをご一読ください。

lions-datalab.hatenablog.com

 

ただ、かなり前の記事ゆえにすでにお読みいただいた方でも内容を忘れてしまった方も多いと思いますので、簡潔にお伝えすると「投手の一つ一つの奪三振に対して、その打者の三振しにくさで重み付けしたうえで奪三振率を計算することで、より本質的な奪三振能力の表現を目指した指標」になります。

 

この指標のポイントになる考え方は「重み付け」です。初稿では奪三振を対象として計算し、先日別シーズンの数値もご紹介したところですが、今回はセイバーメトリクスにおいてしばしば奪三振と同列の重要度で語られる与四球に対しても同様の計算をしてみよう、ということです。

 

投手の与四球に関する指標といえば、与四球率、すなわちBB/9が簡潔かつ有名ですね。定義は以下の通りです。

 

\displaystyle{BB/9= 与四球 \times \frac{9}{投球回数}}

 

この式が示すのは「その投手が9イニングを投げた場合に与える平均的な与四球数」であり、平均値は3程度で、2を切ると優秀といわれるそうです。

 

奪三振力では、一つ一つの奪三振について打者のK%の逆数を「三振しにくさ」と定義して、重み付けした奪三振率を計算しました。今回はBB/9をベースに、同様の考え方、すなわち打者のBB%の逆数を「四球の少なさ」として重み付けしてやります。BB%の逆数とはつまり「一つの四球を得るのに要する打席数」で、少なければ少ないほど与四球を得る能力が高いことになりますね。

 

上記を踏まえ、今回の指標はwOBAのように加重を使うセイバー指標に倣いwBB/9と呼称します。wはweightedの頭文字で、読んで字のごとく「重みを加えた」という意味を表す接頭辞になります。

 

wBB/9の算出方法

 

今回の指標の定義式は下記の通りです。

 

\displaystyle{ wBB/9 = \sum_{i=1}^n \frac{1/b _ {i}}{1/\bar{b}} \times \frac{9}{投球回数}}

 

nが対象の投手の与四球数、b _ {i}が各四球を与えた打者のBB%(シーズンの四球数/打席数)、\bar{b}は全打者のBB%の平均値になります。

 

逆数のところを見やすく整理するとこんな感じですね。

 

\displaystyle{ wBB/9 = \sum_{i=1}^n \frac{\bar{b}}{b _ {i}} \times \frac{9}{投球回数}}

 

数式だけだとイメージしにくいと思いますので、奪三振力の記事と同様に、簡単に例示しましょう。

 

ある投手が12イニングを投げ、佐藤龍世選手に四球を3つ、愛斗選手に1つ与えたとしましょう。2023年のレギュラーシーズンにおいて、龍世選手は257打席で四球が42、愛斗選手は267打席で四球が3なので、"四球の少なさ"はそれぞれ257/42≒6.12、267/3=89になります。いやぁ、それにしてもすごい差だ…。

 

この場合、\bar{b}はおよそ8%前後と言われているので0.08とすると、この投手のwBB/9は下記のように計算されます。

 

\displaystyle{wBB/9 = \frac{6.12×3+89×1}{1/0.08} \times \frac{9}{12}}

 

この計算結果は6.44となります。

 

従来のBB/9ですと3となりますが、四球が少ないのでおなじみ、すなわち相手目線で言えば「与えてはいけない」愛斗選手に四球を与えることでwBB/9は跳ね上がってしまうわけです。

 

逆に、上の例示において、4つの四球全てを「選べるようになった」龍世選手として計算すると、通常のBB/9の3に対してwBB/9は1.47となります。選球眼の良い選手に四球を与えてしまうのはある意味仕方ない、という考え方で、数値が下がるわけです。

 

このような数式に基づき、いつものように2023年のパリーグレギュラーシーズンを対象としてコンピュータの力を借りてババっと計算してみました。

 

【2023シーズン】パリーグにおけるw/BB9ランキング

その結果がこちらの表になります。※対戦打席数100以上の投手が対象

 

奪三振力と同様に、やはりベースとなる指標が良い投手がそのまま上位に来ますね。逆も然り。うちの増田さんはさすがです。

 

ダントツトップのロッテカスティーヨ投手はもちろんすごいのですが、昨季中盤から彗星のごとく現れたオリ東さんが目を引きますね。山本由伸投手という大エースが抜けますが、こう雨後の筍のごとく投手が生えてくる育成環境は羨ましい限りです。

 

「比率」というのはwBB/9をBB/9で除した値であり、このカラムのカラーマップによって重み付けによりどれだけ変わったかがわかるようになっています。

 

この標榜している通り、仮にこの指標が「与四球を防ぐ力」をより正確に示していると仮定すれば、オリの本田投手やハム宮西投手、ロッテ坂本・澤村両投手、西武ティノコ投手なんかは打者のめぐり合わせ次第でもう少し与四球を減らせた可能性が高いですね。いずれの投手もリリーフというのもまた謎の説得力を感じます。ゆえにティノコ投手はもう1年様子見しても良かったかな…と思わないこともない。

 

逆に中位以上にいながら赤が濃い投手というと、オリ田嶋・宮城両投手、ハム河野・上沢両投手、SB東浜投手、楽天早川投手あたりですが、先発が多いのも面白いですね。先発はリリーフと異なり上位から下位まで色々なレベルの打者と万遍なく対戦するため、リリーフよりも運の要素は小さくなります。具体名は伏せますが、与四球の内訳を見ると本来四球を与えてはいけない選手にちらほら与えている点で共通しているので、そのあたりを撲滅することでさらに成績向上を期待できるかもしれません。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。

 

今回は時間がなかったので全体のBB%を8%としたり、セリーグ分を載せられなかったりと片手落ちのような記事になってしまいましたが、そのへんはすぐ対応できるので近くアップしたいと思います。

 

次回はここから発展して、奪三振力とwBB/9を複合させたwK/BBを計算してご紹介したいと考えております。また、初稿では語彙がなさすぎて「奪三振力」という名前にしてましたが、今回のように頭に「w」を付けた方がセイバーっぽくてかっこいいことに気づいたので、その辺もこっそり改称したいですね。お楽しみに。

 

それではまた!

【2023版】球審のゾーンの違いを一般人が入手できるデータで検証してみた

どうも、LDLです。

 

2023年もいよいよ大詰め、皆様いかがお過ごしでしょうか。

 

年初に掲げたノルマである月1更新のラストを飾るのは、私の記事の中で最も需要のある?と思われる球審ゾーン検証の2023年シーズン版になります。ただデータをまとめるだけのつもりが、ちょっとおもしろい事実も見えたので最後まで読んでいただけると嬉しいです。

 

それではいってみましょう。

 

概要

この検証は2020年シーズンから始めたもので、スポナビ一球速報のデータをもとに、球審ごとに異なると思われるゾーンの広さを定量的に評価する」といった趣旨になります。

 

考え方を再掲すると冗長になってしまうので、未読の方はお手数ですがまず過去の記事をご覧くださいませ。そちらで図解しつつ詳しくご説明しております。

 

lions-datalab.hatenablog.com

 

lions-datalab.hatenablog.com

 

パラメータ設定

続いてパラメータの設定です。

 

「きわどいゾーン」と定義するエリアについて、ゾーンのエッジからの距離dとそのゾーン内におけるストライク-ボールの比率Reの関係を見てあげます。

 

ここは「どこが正しい」という明確な基準はないのですが、過去2シーズンはRe=1付近となるd=4を採用してきて今回もグラフが示す通り似た傾向となっていますので、それを踏襲します。サンプル数も同程度の規模があるので、絶対的な信頼性はともかくとして相対評価するための一貫性は保証されていると思います。

 

検証結果

前述のパラメータ設定において、2021~2023年NPBレギュラーシーズンにおける全球審のReを計算した結果がこちらです。各シーズンごとにRe=1を中央値とするために各球審の数値は平均値で割っています。見づらい方は拡大してご覧ください。

 

前回の記事では「Re=1.0を基準とし、"狭い"は2シーズンともに0.9以下、"広い"は1.1以上」として閾値を±0.1としましたが、やはりブレのある指標なようで3シーズン連続ともなるとかなり減ってしまうようです。よって、今回は少し濃淡をつけて表現しています。

 

表の内容をまとめると、下記の通りです。

 

【広い球審】※敬称略

名幸

山路、石山

 

【狭い球審】※敬称略

秋村、山口、長井

原、津川、笠原

 

広い球審は、前回の記事でそうご紹介した丹波さんや橘高さんが現場から去ってしまったためかなり減ってしまいましたね。この3名に加えて、村山さん・木内さん・嶋田さんも1シーズンだけわずかに1を切っているだけで平均は高いので、広い球審と考えていただいて差支えないかなと思います。

 

一方、狭い球審はわりといつものメンツ。シーズン中に試合を観ていて「おや?」と思うときは記事を添えてポスト(ツイート)してきましたが、私個人としては体感とかなり一致しているという印象です。皆様はいかがでしょうか?

 

さて、今回の検証結果と下記リンク先の記事を併せて読んでいただくと、ひとつ興味深い事実が見えてきます。

www.nikkansports.com

 

この検証ではReという指標を作り、「数値が低い=狭い」と定義していますが、3シーズンの平均値が最も低い秋村球審Re=0.53)が「投球判定精度が極めて高く、ストライクゾーンが常に安定していた」と評され最優秀審判員賞を、次いで低い山口球審Re=0.78)が「判定精度も高く」と評され審判員奨励賞をそれぞれ受賞しているんですよね。

 

仮に私の検証が正しいとすれば、「きわどい球をボール判定する傾向のある球審こそ判定の精度が高い」可能性を示唆しています。2020・2021年に最優秀審判員賞を受賞している有隅さんも、サンプル不足のためグレーアウトしていますがReの平均値は山口球審と同じ0.78というのも興味深いです。

 

もちろん、実際の細かい正誤にまつわるデータにリーチする術はないため仮説の域を出ませんが、SNSで結構批判をよく目にする長井球審Re=0.82)ももしかしたら正確なジャッジをされているのかもしれませんね。このへんは来季以降も継続してウォッチし、ご報告したいと思います。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。

 

記事を書く時間もあまりなかったのでただまとめるだけになるかと思いきや、意外な事実が見えてきて個人的には面白かったです。

 

当然のことながら、球審には正確なストライク・ボールのジャッジが求められますが、もし仮に「(相対的に)狭い球審」が実在したとして、それが正確なジャッジをした結果であるのならば、その是非は議論する余地があるかもしれません。

 

というのも、MLBが興行の振興のために時短を標榜したピッチクロックを導入し、NPBでも導入が検討されているようですが、もし正確なジャッジをしたがためにボールが増え、試合時間を長引かせるようなことがあれば時短に逆行する懸念があるためです。

 

プロ野球はあくまで興行なので、試合のルールにしろいまだに賛否燻るCSにしろ、最終的に興収増に寄与する施策であれば、私はモノによっては反対するかもしれませんがとりあえず納得はします。仮に時短が興収増に直結するというエビデンスがあるなら、ストライクのジャッジをガバガバにすれば投手が有利になり間違いなく時短にはつながり、興収増につながる可能性があるためピッチクロックと併せて議論されて然るべきですが…それは果たしてあるべき姿なのか?

 

まぁめんどくさい話をしてしまいましたが、上記はあくまで仮説です。試合時間のデータも取っており、今回の結果を受けてReと試合時間の相関も調べて記事にしたくなりましたので、その際はご一読いただけますと幸いです。

 

今回は以上です。

 

みなさま、今年1年お付き合いいただきありがとうございました。

来年も引き続き細々と活動して参りますので、どうか変わらずお付き合いいただければ幸いです。

 

それでは、良いお年を!

【2023年版】各球種Whiff%ランキング

どうも、LDLです。

 

アジアチャンピオンシップ決勝で熱い戦いが繰り広げられているなかですが、今晩のS-PARKの名物企画「プロ野球100人分の1位」が変化球編ということで、断片的にご紹介してきたWhiff%のランキングをまとめてご紹介したいと思います。

 

Whiff%とは、空振り÷被スイング数で計算される、いわゆるボールのキレを表す指標の一つです。類似のメジャーな指標としてはSwStr%がありますが、こちらは空振り数を被スイング数ではなく全投球数で割るもので、微妙に異なります。

 

ボールの性能を表す指標という意味ではSwStr%は有効ですが、全投球を対象にしておりキレがあろうがなかろうが関係なく振るわけもないクソボールもカウントされてしまっているため、こと「キレ」を表す指標としてはこちらの方が正確だと私は考えております。打者が「打てる」と思って振ったのに空振りした、というわけですからね。

 

では、前置きはこれくらいにして、早速本題に入りましょう。

 

球種ごと、といっても現代の野球において球種は非常に多岐にわたるため、タイトル詐欺のようになってしまいますがある程度はまとめます。

 

どうまとめるかというと、いわゆるパワプロ方式で、変化する方向で分類します。詳細は以下の通りです。

 

ストレート:ストレート

スラ系  :スライダー・カットボール・スラーブ

カーブ系 :カーブ・スローカーブナックルカーブ・パワーカーブ

フォーク系:フォーク・スプリット・チェンジアップ・パーム・縦スライダー

シンカー系:シンカー・スクリュー

シュート系:シュート・ツーシーム・ワンシーム

 

いつものようにスポナビさんから集計したデータを使って、2023年レギュラーシーズンを対象として100球以上投げた投手をランキング形式で掲載していきます。それではいってみましょう。(普段パばかり見てるので、コメントは基本的にパのみで、セはいい加減なこと言いたくないので少なめです。ご了承ください)

 

 

ストレート

パでは、以前X(旧Twitter)でご紹介したのは300球以上を対象としていたので漏れてしまったモイネロさんが圧倒的な数値で堂々の1位。戦力外から見事なカムバックを果たしたロッテ澤田さんも見事な数値です。

 

セは中日勢がTOP3を独占。特に、パファンにもその剛球が知れ渡るライマルさんを2人も上回っているのがすごいですね。その他、私がドラフト前に推していた広島の河野さんが上位につけているのも嬉しいです。

 

スラ系

パは元々スラに定評のあったロッテ東妻さんが1位に。

 

2位の西武ティノコさんのスラも空振りを取れてるのはなんとなく認識してましたが、まさかこの位置につけてるとは驚きです。ツーシームも良く光るものはあるだけに、もう少しなんとかならなかったのか…。 

 

カーブ系

パのカーブ系は以前ノーヒッターを達成したポンセさんが1位。

2位は我らが隅田さんで、Xでも投稿してきたように今季の躍進を支えた球種であるカーブの威力が数値にも表れた形です。

 

セの2位はFAも特に音沙汰のない石田さん。Cランクとのことですしお買い得だと思いますが、どこが声をかけるのか…。

 

フォーク系

パのフォーク系1位は、MLB挑戦に向けて圧巻のパフォーマンスで締めくくった松井さん。振らせれば半分以上空振りというチートなボールでしたね。

 

2位は私がファームで燻ってるときからずーーーーーーーーーーーっと「1軍でも十分通用する」と推してたタムイチさんの魔球チェンジアップ。その通りの結果になって満足です。西武勢では隅田さんのスプリットが8位、チェンジアップが18位にランクインしており、ストレートのキレさえ増せばもう無敵ですね。

 

3位のオリ山下さんもカーブに続いてTOP3入りは本当にお見事。少ない球種で抑えてるのは周知の事実ですが、見事に数値にも表れていますね。

 

セは横浜の2投手がワンツーフィニッシュ。3位ライマルさんはストレートでも3位に入っており、空振りを奪える速球と落ち球があればそりゃお手上げというのも納得ですね。

 

シンカー系

こちらは使う投手が圧倒的に少ないのもありますが、セパともに代表的な使い手がそれぞれ1位に。カツオくんこと石川さんは大ベテランなのにこのパフォーマンス、本当にお見事というほかありません。

 

シュート系

この球種は空振りを奪うのが目的というわけでもないので参考程度ですが、パはロッテ中村稔弥さんが圧倒的な数値で1位に。今季は登板機会は多くないながらも昨季と比べるとかなり成績は良化しており、来季はさらなる躍進が期待されます。

 

また、ここは個別にどうこうというよりも、投球数100以上というフィルタによりパの対象者がセより圧倒的に少なくなった点がリーグ間の野球の違いを表しているようで興味深いです。

 

おわりに

いかがでしたでしょうか。

 

変化球は空振りを奪うことが目的ではなく、あくまで相手を抑える手段の一つなのでWhiff%はその性能を示す指標の一つにすぎません。ゆえに必ずしも「Whiff%が高い=良いボール」というわけではありませんが、思ったより高いとか逆に低いといった発見があれば、指標として可視化した甲斐があるというものです。

 

個人的には、タムイチさんや隅田さんが高次元の数値を残せていたのが嬉しい反面、エース・光成さんの球種がTOP30にどこにも入っていないのが意外かつ残念でしたね。

 

セイバーメトリクスにおいてよく言われることですが、バットにボールを当てられてしまうとどうあがいても運の要素が介在してきてしまいますし、安定した成績を残す上では空振り、ひいては三振を奪えることが重視されます。

 

光成さんの奪三振率は6.97と、規定投球回に達した投手の中では中位くらいで決して悪い数値というわけではありませんが、争奪戦の様相を呈している山本さんの9.27からは大きく水をあけられてしまっていますね。先日記事にした奪三振力でもパ全体で真ん中くらいです。

 

自ら最高の成績を残してライオンズを悲願の優勝に導きつつ、目標としているMLBからより高い評価を受けるために、今オフは奪三振能力をより高めるための取り組みをしていただければと思います。

 

今回は以上です。ご覧いただきありがとうございました!!

【2023年度版】奪三振"力"

 

どうも、LDLです。

 

今回もなんやかんやでギリギリの更新になってしまいました。年初に掲げた月1更新のノルマ、残り2か月ですが何とか達成したいものです。

 

さて、前回予告した通りレギュラーシーズンの総括的なものをしていきたいと思いますが、最初のテーマは記念すべき初稿で取り上げた「奪三振力」です。

 

奪三振力とは、一般的に奪三振能力を示すといわれている奪三振率という指標とは異なり、三振を奪った相手打者の「三振しにくさ」も加味した本ブログオリジナルの指標です。

 

未読の方や、忘れてしまったという方はそちらをご覧ください。

 

lions-datalab.hatenablog.com

 

この指標、いくつか作ってみたオリジナル指標の中では最も反響があったのでX(旧Twitter)アカウントのトップにも固定しているのですが、せっかく作ったのに2020年シーズン以来全く算出していなかったので、今回改めて2023年シーズンを対象として出力してみました。これからは毎シーズンオフに改良も加えながら出していければと考えております。

 

ではさっそく見て見ましょう。

今回はパリーグで100打席以上対戦した投手を対象として、左から奪三振力の順位と数値、奪三振率の順位と数値、右端に奪三振力と率の比率をカラーマップで掲載しています。分量が多いので、拡大してご覧ください。

2023年シーズンパリーグにおける奪三振データ

やはり圧倒的な投手力パリーグのライバルを蹂躙したオリックス投手陣が目立ちますね。トップ10の実に半数を占めています。

 

それでも1位は譲らない、ロッテ佐々木さんはさすがの一言。奪三振率ではワゲスパックさんに譲りましたが、より本質に近い(と私が思っている)奪三振力では圧倒的な差をつけて堂々の1位でした。

 

一方我らがライオンズはというと、先発転向1年目から息をするようにQSを量産した平良さんが11位にランクインしたものの、上位チームと比べるとやはり見劣りしている感は否めません。


セイバーメトリクスでは奪三振能力は四球と並んで「運に左右されない投手の能力を繁栄した数字」とされてますから、メジャー移籍を目指す光成さん(46位)や上沢さん(61位)はもう少し奮起したいところ。


その他、比率を見るとオスナさんがかなり傑出しているのがわかります。これは奪三振率に対する奪三振力の大きさなので、これが高いということは率が示す以上に「三振を取りづらい打者」からも三振を奪えていることになります。この辺はさすがメジャーのセーブ王、相手なんて関係ないといったところでしょうか。その他だとロッテ佐々木さんやメジャー挑戦が耳目を集める楽天松井さんなんかも素晴らしく、メジャー関係者垂涎の内容でしょうか。

 

この観点ですと、今季目玉FAの一人であるハム加藤さん奪三振力・奪三振率がそれぞれ90位、92位と低いながらも比率が2.8と高い数値になっているのが目を引きますね。成績を残せた要因の一つなのかもしれません。

 

取り急ぎ今回は以上になります。

投稿日時を見てもわかるように、ギリギリで書いてるのでご容赦ください…。

 

近いうちに、今回書けなかったセリーグやファームの奪三振力や他の指標も投稿したいと思うので、お楽しみに。

 

では!

「やらかし」エラーをざっと集計してみた。

どうも、LDLです。

 

毎度おなじみ、月末ギリギリの更新です。9月は色々とあってX(旧Twitter)の更新も滞りがちでしたが、こちらも9/30に慌てて書いております。

 

というわけでサクッといきますが、今回はいわゆる「やらかし」エラーを集計してみた、という内容です。なぜこれをテーマにしたかは、私のフォロワーの方であればだいたい察しはつくかと思います。

 

ただ最初にことわっておきますが、この記事は決して特定の選手のエラーについて揶揄するような意図はありません。これまで色々と考えてきた指標と同じで、「実際どうなの?」というのを印象を排して評価するためのものです。

 

(といっても前述の通り時間がなく準備不足なので十分な分析はできていないので、タイトルに「ざっと」と入れて予防線を張ってはいますが…)

 

いち西武ファンとしては、いわゆる「やらかす」選手といわれてパッと思い浮かぶのは(申し訳ありませんが)OBの原さんに、現役だと山野辺さんや今季打撃開眼した佐藤龍世さんあたりですが、「これって結局印象にすぎないよな」っていうのが今回の記事の発端です。

 

それをしっかり集計しつつトレースしていくことで、「やらかす」選手というのは本当に存在するのかを検証できればなと思った次第です。一般的に勝負強さを表すと思われがちな得点圏打率のように年度間相関が低ければ、その存在は否定されるというわけです。

 

それではいってみましょう。

 

 

やらかしの定義

まず「やらかし」の定義についてご説明します。

 

これは恐らく人によって千差万別だと思いますが、まずわかりやすく思い浮かぶのはタイムリーエラーですよね。

 

その他、終盤の勝負所でのエラーという方もいらっしゃるかと思いますが、私が思うに「失点に結びついたエラー」こそ印象に残りやすく、それが多い選手ほど「やらかす」と思われているような気がしています。

 

異論は全然認めますが、とりあえず以下ではシンプルにそれを集計していきます。

 

集計方法

続いて具体的な集計方法をご説明します。

 

2023年7月9日 オリックス・バファローズvs.埼玉西武ライオンズ 一球速報 - プロ野球 - スポーツナビ

 

画像は、件の龍世さんがタイムリーを放つもタイムリーエラーを2回も喫してしまったあの試合の一球速報になります。

 

私のデータベースは基本的にスポナビさんの情報から構成されており、1アクションごとに上端の白い枠のテキスト「三エラー +1点 …」を記録しているので、ここを起点として、エラーをした瞬間からイニングが完了するまでに失点した場合を「やらかし」として定義したいと思います。

 

厳密にやるのであれば、その守備をしっかり完遂した場合と比較しての失点のみをカウントすべきではある(例えば、先頭打者をエラーで出塁させたのち、次の打者にHRを打たれてもエラーは失点の有無に直接的には関係していない)のですが、残念ながら私のデータベースはそこまで細かい分析をできる作りにはなっていないため、とりあえずこの定義で集計していく点はご理解いただいたうえで以下読み進めてください。

 

集計結果とまとめ

2023/9/29時点のレギュラーシーズンのデータにおいて、両リーグの失策数上位10位前後を対象とし、上記の定義に基づく「やらかし」の回数と失点を集計してみました。

 

一応二つの指標を作ってまして、一つはやらかした回数を失策数で除した「やらかし率」、もう一つはやらかし後の失点をやらかした回数で除した「やらかしあたりの失点」です。それらの集計結果はこちらになります。

うーん。

龍世さん、やはりというか、今季は印象通りでしたね…。

 

前述の通り、簡単な集計ゆえ直接的にこれらの選手のエラーが全て失点に結びついているわけではないと思いますが、それにしても確率が高すぎますね。来季も集計してみて、単純な失策数はもちろんのこと、この指標が劇的に改善されることを願います。

 

一方、意外なのは言わずと知れた球界を代表する守備職人の我らが源田キャプテンで、率・失点ともに上位となってしまいました。

 

今季もライオンズファンのみならず、侍JAPANも十分なくらいその華麗な守備に助けられてきましたが、冷静になってみると過労が祟ったのかやや精彩を欠くミスもちらほらあったような。それでも私としては源田さんに対し「やらかす」印象なんて一切ないわけで、もしかしたら過去の圧倒的な実績によるバイアスはかかってしまっているかもしれませんね。

 

それに率といっても見ての通りサンプル数が少なすぎるので、あくまで参考として受け止めていただきつつ、印象と実態の違いで面白い発見があれば幸いです。

 

駆け足になりましたが今回は以上です。

 

次回はレギュラーシーズンも完了しているので、その総括か、ドラフトの記事のいずれかをお送りしたいと考えております。

 

では、今後ともよろしくお願いします!

3月記事「パ6球団のNEXT BREAK」の現在地

こんにちは、LDLです。

 

相変わらず月末ギリギリの更新です。本当は別の検証をしていたのですが、高熱で寝込んだり仕事が忙しかったりバスケWCがアツすぎたりとデータ分析の時間がとれず、急遽テーマを変えました。

 

内容は開幕前に書いた記事「パ6球団のNEXT BREAK」の検証になります。「この選手はいいぞ!」とご紹介しておきながら、その通り活躍した選手だけ取り上げてドヤ顔するのは違うと思っているので、シーズンも終盤に入ったこのタイミングで実際にどうなったかをご紹介していきます。

 

それではいってみましょう。

 

 

オリックス:山下 舜平大

 

【レギュラーシーズン成績】(8/31現在)

登板数 :16

勝敗  :9勝3敗

投球回 :95

被安打 :74

被打率 :.206(右.206、左.206)

本塁打:2

与四球 :30

奪三振 :101

自責点 :17

防御率 :1.61

K/BB  :3.37

WHIP   :1.06

 

【投球分布図】

言わずと知れた今季の新人王レースにおける最有力候補です。

 

OP戦でも圧倒的な成績を残し絶賛しましたが、その通りシーズンでも実力を如何なく発揮して二桁勝利も十分射程圏内に捉えています。

 

最速160km/hの速球を軸に変化球はカーブ・フォークのみと非常にシンプルな組み立ては変わらずも、それぞれの球種が決め球クラスの威力があるのがすごいですね。キレのある速球とカーブ・フォークという比較的被弾しやすいスタイルに加えてOP戦では被本塁打2本と一発癖が懸念されたものの、蓋を開けてみればシーズンでもここまで2本と全くの杞憂でした。左右の被打率に差がなく左右の弱点がないというのも、先発として安定した活躍をするうえでポイント高いですね。

 

強いて改善点を挙げるなら、半分近くがボールになっているフォーク(赤枠)でしょうか。空振りは左右ともに20%以上取れているのでキレは問題ないと思いますが、これの制球を高められればさらに手の付けられない投手になるでしょう。末恐ろしい…!

 

ソフトバンク:大津 亮介

 

【レギュラーシーズン成績】(8/31現在)

登板数 :36

勝敗等 :2勝0敗 11H  0S

投球回 :30.2

被安打 :30

被打率 :.261(右.239、左.295)

本塁打:5

与四球 :5

奪三振 :17

自責点 :10

防御率 :2.93

K/BB  :3.40

WHIP   :1.14

 

【投球分布図】

1年目から30試合以上登板し、防御率2点台に二桁Hと即戦力のドラ2としては十分及第点の活躍を見せています。WHIPが1強、K/BBは3超で指標的に合格点でしょう。

 

ただし、対左は被打率が悪く(.295)、対右は被弾が多いとどちらにも弱みがある点は気になりますね。ワンシームという特殊球を扱う、横の揺さぶりが軸となる投手なので、対左は「甘いコースをしっかり打たれているだけ」とも取れますが、対右はあえて球種を速球とスラ系に絞ったうえで被弾してしまっているのが不可解なところです。

 

奪三振率は4.99と決して高くはなく、入団時は「7色の変化球を操る」と称された技巧派の投手だけに、3月の記事でも書いた通り先発で使ってあげた方が真価を発揮できるのかなと考えずにはいられないここまでの内容でした。

 

西武:佐藤 隼輔

 

【レギュラーシーズン成績】(8/31現在)

登板数 :40

勝敗等 :1勝1敗 14H 0S

投球回 :34

被安打 :34

被打率 :.362(右.196、左.311)

本塁打:1

与四球 :15

奪三振 :27

自責点 :11

防御率 :2.91

K/BB  :1.80

WHIP   :1.44

 

【投球分布図】

 

開幕戦の好評価そのままに、層がペラッペラとはいえ1軍の左リリーバーの1番手まで見事に登りつめました。ここまで40登板以上している中で防御率3点を切っているのは及第点と言えるでしょう。

 

ただ私が期待したほどのパフォーマンスには至っておらず、ストガイのスタイルのわりに奪三振率は少々物足りないですし、ストレートも思ったほど空振りが取れていません。それこそストレートの投球数に占める空振り率は「技巧派」と紹介した大津投手以下です。イニングの半数くらい四球も与えてしまっているせいで、主要指標のK/BB、WHIPでも見劣りしてしまっていますね。

 

それでも対右はクロスファイアで押し込めており被打率2割以下と見事に抑えてますが、対左となると内を突く攻め手を欠き、変化球もスラのみと心許なく、被打率も3割オーバー。左のリリーバーはどうしても対左の能力を求められる傾向にありますし、前述の通り西武はそこがペラッペラなので、来季までに対左の攻め手を増やして飛躍したいところですね。

 

楽天:黒川 史陽

 

【レギュラーシーズン成績】(8/31時点)

22打数 2安打 2打点 0四球 1本塁打 5三振 0盗塁

打率:.091 長打率:.227 出塁率:.087 OPS:.314

 

【打撃内容】(ファーム)

4月頭にHRを放つなど幸先の良いスタートを切ったものの、1軍定着とはならず。

 

元々逆方向に打つのが上手いのはお伝えしておりましたが、ファームではしっかり引っ張って強い打球も打てており、打球方向のバランスは良好。どの球種にもコンタクトできてますし、ヒットも打てているのでここまで3割超えも納得の内容ですね。

 

唯一の懸念点は左投手の速球や内角を打てていないことですが、本当にそれくらいで、少なくとも打撃に関してはもうファームレベルでやることはほとんどないはず。主戦場の二塁は、1軍ではまだまだ浅村選手が君臨しているためなかなか出番が来ませんが、他球団ながら我慢して使ってあげてほしい選手の筆頭です。

 

腐ることなく虎視眈々と研鑽を積んでほしいですね。

 

ロッテ:小沼 健太

 

【レギュラーシーズン成績】(8/31現在)

登板数 :4

勝敗等 :0勝0敗

投球回 :7

被安打 :9

被打率 :.310(右.267、左.357)

本塁打:1

与四球 :3

奪三振 :4

自責点 :7

防御率 :9.00

K/BB  :1.33

WHIP   :1.71

 

【投球分布図】(ファーム)

他の選手と比べるとやや穴馬のような感じで思い切って取り上げた小沼投手ですが、ここまでは1軍登板わずか4試合にとどまり、途中でトレードで放出されてしまう等苦戦が続いています。

 

最大のストロングポイントであるフォークは対左でしっかり決め球として機能していますが、対右では被打率が高く、ボールもともに40%超と今一つ。

 

また、3月の記事でも改善点とご紹介したストレートがあまり改善されず、打球方向からもわかる通り気持ちよく引っ張られてしまっているのが苦しいですね。それもファームレベルで。

 

ストレートとフォーク中心のザ・本格派スタイルは、どちらもハイレベルなボールになって初めて相乗効果を発揮して成り立ちます。今後もこのスタイルを貫くのであれば、やはりストレートのレベルアップが急務ですね。

 

日本ハム:金村 尚真

 

【レギュラーシーズン成績】(8/31現在)

登板数 :3

勝敗等 :1勝1敗

投球回 :18.1

被安打 :15

被打率 :.214(右.147、左.278)

本塁打:0

与四球 :3

奪三振 :20

自責点 :5

防御率 :2.45

K/BB  :6.67

WHIP   :0.98

 

【投球分布図】

オリ山下投手と並んで新人王候補の双璧だと思っていたのですが、残念ながらたった3試合であえなく脱落してしまいました。

 

それでも実力の片鱗は十分見せてくれており、ストレートやスラはムダなボールが少なく空振りも取れるキレがあり、フォークもオリ山下投手同様ややボールこそ多いものの決め球として機能しています。即戦力に相応しい総合力の高さを示してくれました。特にスライダーは素晴らしいですね。

 

対左の被打率がやや悪いですが、これだけどの球種でも空振りを取れているので十分改善は可能でしょう。とはいえ無事是名馬、試合で投げられないことには何の意味もないので、来年はしっかり1年通して1軍で投げられる体を作ってきてほしいですね。

 

おわりに

 

いかがでしたでしょうか。

 

本当なら全員が好結果を残してドヤりたかったのですが、所詮は素人の目なので、なかなか上手くいかないものですね。ましてOP戦の少ない戦績と映像だけでは限界がありました…。

 

ただ他球団の選手について、データは西武と同様に全て取っているもののこうしてじっくり眺める機会もなかなかなかったので、書いていて楽しい記事でもありました。もっとデータのビジュアルも拡充したうえで、来季もやってみたいと思いますので、その際はぜひご一読くださいませ。

 

それではまた。