Lions Data Lab

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【2023版】球審のゾーンの違いを一般人が入手できるデータで検証してみた

どうも、LDLです。

 

2023年もいよいよ大詰め、皆様いかがお過ごしでしょうか。

 

年初に掲げたノルマである月1更新のラストを飾るのは、私の記事の中で最も需要のある?と思われる球審ゾーン検証の2023年シーズン版になります。ただデータをまとめるだけのつもりが、ちょっとおもしろい事実も見えたので最後まで読んでいただけると嬉しいです。

 

それではいってみましょう。

 

 

概要

この検証は2020年シーズンから始めたもので、スポナビ一球速報のデータをもとに、球審ごとに異なると思われるゾーンの広さを定量的に評価する」といった趣旨になります。

 

考え方を再掲すると冗長になってしまうので、未読の方はお手数ですがまず過去の記事をご覧くださいませ。そちらで図解しつつ詳しくご説明しております。

 

lions-datalab.hatenablog.com

 

lions-datalab.hatenablog.com

 

パラメータ設定

続いてパラメータの設定です。

 

「きわどいゾーン」と定義するエリアについて、ゾーンのエッジからの距離dとそのゾーン内におけるストライク-ボールの比率Reの関係を見てあげます。

 

ここは「どこが正しい」という明確な基準はないのですが、過去2シーズンはRe=1付近となるd=4を採用してきて今回もグラフが示す通り似た傾向となっていますので、それを踏襲します。サンプル数も同程度の規模があるので、絶対的な信頼性はともかくとして相対評価するための一貫性は保証されていると思います。

 

検証結果

前述のパラメータ設定において、2021~2023年NPBレギュラーシーズンにおける全球審のReを計算した結果がこちらです。各シーズンごとにRe=1を中央値とするために各球審の数値は平均値で割っています。見づらい方は拡大してご覧ください。

 

前回の記事では「Re=1.0を基準とし、"狭い"は2シーズンともに0.9以下、"広い"は1.1以上」として閾値を±0.1としましたが、やはりブレのある指標なようで3シーズン連続ともなるとかなり減ってしまうようです。よって、今回は少し濃淡をつけて表現しています。

 

表の内容をまとめると、下記の通りです。

 

【広い球審】※敬称略

名幸

山路、石山

 

【狭い球審】※敬称略

秋村、山口、長井

原、津川、笠原

 

広い球審は、前回の記事でそうご紹介した丹波さんや橘高さんが現場から去ってしまったためかなり減ってしまいましたね。この3名に加えて、村山さん・木内さん・嶋田さんも1シーズンだけわずかに1を切っているだけで平均は高いので、広い球審と考えていただいて差支えないかなと思います。

 

一方、狭い球審はわりといつものメンツ。シーズン中に試合を観ていて「おや?」と思うときは記事を添えてポスト(ツイート)してきましたが、私個人としては体感とかなり一致しているという印象です。皆様はいかがでしょうか?

 

さて、今回の検証結果と下記リンク先の記事を併せて読んでいただくと、ひとつ興味深い事実が見えてきます。

www.nikkansports.com

 

この検証ではReという指標を作り、「数値が低い=狭い」と定義していますが、3シーズンの平均値が最も低い秋村球審Re=0.53)が「投球判定精度が極めて高く、ストライクゾーンが常に安定していた」と評され最優秀審判員賞を、次いで低い山口球審Re=0.78)が「判定精度も高く」と評され審判員奨励賞をそれぞれ受賞しているんですよね。

 

仮に私の検証が正しいとすれば、「きわどい球をボール判定する傾向のある球審こそ判定の精度が高い」可能性を示唆しています。2020・2021年に最優秀審判員賞を受賞している有隅さんも、サンプル不足のためグレーアウトしていますがReの平均値は山口球審と同じ0.78というのも興味深いです。

 

もちろん、実際の細かい正誤にまつわるデータにリーチする術はないため仮説の域を出ませんが、SNSで結構批判をよく目にする長井球審Re=0.82)ももしかしたら正確なジャッジをされているのかもしれませんね。このへんは来季以降も継続してウォッチし、ご報告したいと思います。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。

 

記事を書く時間もあまりなかったのでただまとめるだけになるかと思いきや、意外な事実が見えてきて個人的には面白かったです。

 

当然のことながら、球審には正確なストライク・ボールのジャッジが求められますが、もし仮に「(相対的に)狭い球審」が実在したとして、それが正確なジャッジをした結果であるのならば、その是非は議論する余地があるかもしれません。

 

というのも、MLBが興行の振興のために時短を標榜したピッチクロックを導入し、NPBでも導入が検討されているようですが、もし正確なジャッジをしたがためにボールが増え、試合時間を長引かせるようなことがあれば時短に逆行する懸念があるためです。

 

プロ野球はあくまで興行なので、試合のルールにしろいまだに賛否燻るCSにしろ、最終的に興収増に寄与する施策であれば、私はモノによっては反対するかもしれませんがとりあえず納得はします。仮に時短が興収増に直結するというエビデンスがあるなら、ストライクのジャッジをガバガバにすれば投手が有利になり間違いなく時短にはつながり、興収増につながる可能性があるためピッチクロックと併せて議論されて然るべきですが…それは果たしてあるべき姿なのか?

 

まぁめんどくさい話をしてしまいましたが、上記はあくまで仮説です。試合時間のデータも取っており、今回の結果を受けてReと試合時間の相関も調べて記事にしたくなりましたので、その際はご一読いただけますと幸いです。

 

今回は以上です。

 

みなさま、今年1年お付き合いいただきありがとうございました。

来年も引き続き細々と活動して参りますので、どうか変わらずお付き合いいただければ幸いです。

 

それでは、良いお年を!